アル・ファフリー
『 アル・ファフリー 』
イブン・アッティクタカー
1302
中東政治学

名著の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋古代政治学", "西洋中世政治学", "中東政治学" ]

テーマ

帝王学 君主について 国家について 政治について

概要

アラビア語による歴史書・帝王学の著作である。原題は『支配者の教養とイスラーム諸王朝に関するファフリー』。本書は序文に続いて、第1章「君主の政治と政策」、第2章「王朝各論」から成り立っている。

目次

内容

第1章「君主の政治と政策」では、諸々の実際に起こった事件や争いの中で、臣民を統治し、王国を安全に守り、倫理行為を改善しようとする場合に有効な政治とその慣習」を記述した。 統治者として最も緊要な資質として理性と公正を挙げている。知識によって理性は獲得されるものであり、また公平さを備えている人物ならばイスラム教徒でなくとも望ましい。 ただし王者に必要な知識とは専門家と相談することを可能にする程度に学問に親しむことである。全てを知る必要はなく、政治家は博識さを宣伝する必要はない。 王者の資質として信仰心も強調されており、人間は過失の上で成り立っているために憎悪や怒りの感情に支配されてはならないように注意しなければならない。 王者の徳目には気前よさや約束を守る信義、そして忍耐などもある。 ただし王者は臣民の種類を見分けた統治を行わなければならず、上流階級は崇高な人徳と優しい指導、中流階級には飴と鞭、そして下流階級は恐怖と正義の強制により統治しなければならない、としている。 第2章「王朝各論」では初代正統カリフのアブー・バクルからアッバース朝最後のカリフ・ムスタアスィムまで治世順に配列しており、正統カリフ4代に続き、ウマイヤ朝、アッバース朝の歴代カリフたちとその治世での事蹟、事件、宰相(ワズィール)たちの事蹟を各論で述べる形式となっている。
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イブン・アッティクタカー
イスラム

著者の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋古代政治学", "西洋中世政治学", "中東政治学" ]

著者紹介

中世イスラーム世界の政治学者。 1302年に当時恩顧を受けていたイル・ハン国の第7代ハン、ガーザーンの部下であったモスルの太守ファフル・アッディーンに献上する形で、政治論・君主論に関する著作『アルファフリー』を表した。 『アル・ファフリー』の中で、著者であるイブン・アッティクタカーは当時の時代状況下で、著者にできうる限りの公平公正な史論を展開しようとしたと述べており、シーア派の人物でありながら、正統カリフやウマイヤ朝に対し簒奪者としての罵倒を浴びせず、四代カリフはその宗教性を賞賛するなどしている。 また同書では同時に修辞や雄弁の術を使いすぎることを戒めており、批判の対照としてイブン・スィーナーの医学典範を挙げている。