『 シミュラークルとシミュレーション 』
1981
西洋現代社会学
名著の概要
ジャンル
[
"社会学",
"西洋社会学",
"西洋現代社会学",
"哲学",
"西洋哲学",
"西洋現代哲学"
]
テーマ
消費社会について
メディアについて
意味と価値について
シミュラークル
シミュレーション
概要
大量生産・消費社会において、コピーされていくものは増え、リアルなものは死んでいった。むしろ、シミュラークルの方が(ハイパー)リアルを生み出している。複製技術によって外観は死んだし、電気・情報の技術によって意味が死んだ。そういう時代が現代であると説いた著書。
目次
内容
シミュラークルとは、現実との対応関係から解放され、もはや現実を反映する必要のない純粋な記号としての「もの」やイメージまたはそれらのシステムを意味する。
現実とそのイメージの関係を、(1)現実の忠実な反映としてのイメージ、(2)現実を歪めるイメージ、(3)現実の不在を隠すイメージ、(4)いかなる現実とも無関係なイメージに区別し、(4)をオリジナルとコピーの二項対立を超越した純粋なシミュラークルと呼んでいる。
そして、現実と記号の等価性の原則から出発する表象(リプレゼンテーション)とは異なり、もはや客観的現実を必要としないこのシミュラークルの産出過程をシミュレーションと名づけるのである。
このような思想の前提には、あらゆる財とサービスが情報メディアのネットワーク上で差異表示記号として機能する現代消費社会では、現実と記号の関係が逆転し、現実世界自体が記号化されてしまったという認識がある。ボードリヤールのシミュレーション論がスーパーリアリズム(ハイパーリアリズム)など現代美術に大きな影響を与えたのはそのためである。
シミュラークルの実例は、コンピュータ・グラフィクスやホログラム(三次元写真)などからディズニーランド型のテーマパークまでじつに多様であり、20世紀末以降は高度消費社会そのものがシミュラークル化しつつある。
「要するに、メディアはメッセージだ、というのはメッセージの終わりだけを意味するのではなく、メディアの終りをも意味する。文字通りのメディアなるものはもはや存在しない(私は特に大衆のエレクトロニクス・メディアに注目しているのだが)ーーつまりある現実ともうひとつの現実、ある実在する状態ともうひとつの実在する状態とを媒介する力のある機関はもう存在しないのだ。」
ボードリヤール
フランス
著者の概要
ジャンル
[
"社会学",
"西洋社会学",
"西洋現代社会学",
"哲学",
"西洋哲学",
"西洋現代哲学"
]
著者紹介
フランスの哲学者、思想家である。『消費社会の神話と構造』は現代思想に大きな影響を与えた。ポストモダンの代表的な思想家とされる。
『消費社会の神話と構造』(1970)で,消費が欲求の単純な充足ではなく、記号化された「モノ」を通じた差異化の行動であることを鋭く指摘して,世界の思想界の注目を浴びた。
セゾングループの堤清二はボードリヤールの消費社会批判に触発されて無印良品を立ち上げた
その後『象徴交換と死』(1976)と『シミュラークルとシミュレーション』(1981)などの著作で,オリジナル不在のコピーであるシミュラークル(摸像)によって現実が情報(データ)に置き換えられて消滅する状況を描き出し,バーチャル・リアリティとマルチメディアの時代を予告したため、本人の意図に反して「ポストモダン」の代表者と目された。
その思想は映画マトリックスのもとにもなった。