ハーモニー
『 ハーモニー 』
伊藤計劃
2008
日本現代戦後文学

名著の概要

ジャンル

[ "文学", "東洋文学", "日本文学", "日本現代文学", "SF小説", "日本SF小説", "日本現代戦後文学" ]

テーマ

人間とは何か 意識とは何か 暴力とは何か 感情とは何か 幸福とは何か 世界とは何か 国家とは何か 秩序とは何か 平和とは何か 管理社会について

概要

第40回星雲賞(日本長編部門)および第30回日本SF大賞受賞。「ベストSF2009」国内篇第1位全身がんに侵された著者が、死の直前まで病床で書き連ねた遺作。 21世紀後半の、完全なる福祉厚生社会が舞台。人体にインストールする「WatchMe」と呼ばれる医療システムにより、病気の大半が駆逐された世界。その過剰とも呼べる心身のケアに支えられたユートピア=ディストピアからの、自死による逃亡を図った少女たち……ミァハ、トァン、キアンを軸に、作中時間を前後しながら物語は進行する。

目次

内容

2019年、アメリカ合衆国で発生した暴動をきっかけに、全世界で戦争と未知のウイルスが蔓延した「大災禍(ザ・メイルストロム)」によって従来の政府は瓦解し、新たな統治機構「生府」の下で高度な医療経済社会が築かれた。この社会体制では、そこに参加する人々自身が公共のリソースとみなされ、社会のために健康・幸福であることが義務とされた。「ザ・メイルストロム」から半世紀を経た頃、女子高生の霧慧(きりえ)トァンは、生府の掲げる健康・幸福社会を憎悪する御冷(みひえ)ミァハに共感し、友人の零下堂(れいかどう)キアンと共に自殺を図るが、途中でキアンが生府に密告したため失敗し、ミァハだけが死んでしまう。 13年後、WHO螺旋監察事務局の上級監察官として、生府の監視の行き届いていない辺境や紛争地帯で活動していたトァンは、ニジェールの戦場で生府が禁止する飲酒・喫煙を行っていたことが露見し、日本に送還されてしまう。日本に戻ったトァンはキアンと再会し昼食を共にするが、そこでキアンは「ごめんね、ミァハ」という言葉を残して自殺する。同時刻に世界中で6,582人の人々が一斉に自殺を図る「同時多発自殺事件」が発生しており、螺旋監察事務局が捜査に当たることになった。事件には死んだミァハが関係していると考えたトァンは、ミァハの遺体を引き取った冴紀ケイタの許を訪れた。そこでトァンは、自身の父親である霧慧ヌァザが人間の意志を操作する研究を行っていたことを聞かされ、ヌァザの研究仲間ガブリエル・エーディンがいるバグダッドに向かう。 バグダッドに向かう前、トァンはインターポール捜査官エリヤ・ヴァシロフの接触を受け、人間の意志を操る「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」という組織が生府上層部にあり、同時多発自殺事件に関与していることを聞かされる。トァンが空港に向かう途上、同時多発自殺事件を実行した犯人の犯行声明がテレビ放送され、「健康・幸福社会を壊すため、1週間以内に誰か1人を殺さなければ、世界中の人間を自殺させる」と宣言した。 バグダッドに到着したトァンはエーディンと面会、またその日の夜に「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の中心人物と会う。そこでハーモニー・プロジェクトなる驚くべきプロジェクトの内容とその人員が明らかになる。トアンは、ハーモニー・プロジェクト及び関連する人物達に巻き込まれていき・・・。
伊藤計劃
伊藤計劃
日本

著者の概要

ジャンル

[ "文学", "東洋文学", "日本文学", "日本現代文学", "日本SF小説", "SF小説", "日本現代戦後文学" ]

著者紹介

日本のSF作家。武蔵野美術大学美術学部映像科卒業。 Webディレクターの傍ら執筆した『虐殺器官』が、2006年第7回小松左京賞最終候補となり、ハヤカワSFシリーズ Jコレクションより刊行され、作家デビュー。同作はゼロ年代日本SFのベストに挙げられている。同作品は、癌が寛解状態だった2006年5月、10日間をかけて執筆した。 期待の新人として脚光を浴びるも、2009年3月、肺癌のため死去。 2009年12月6日、遺作となった『ハーモニー』で第30回日本SF大賞を受賞した。「特別賞」枠を除き、故人が同賞を受賞するのは初めてであった。