人間の可能性を伸ばすために
『 人間の可能性を伸ばすために 』
マリア・モンテッソーリ
1947
教育学

名著の概要

ジャンル

[ "社会学", "西洋社会学", "西洋現代社会学", "教育学", "幼児教育" ]

テーマ

子どもについて 子どもの教育について 親について

概要

6歳までのあいだに感受性を育んだ子どもに必要な教育とはなにか。6~12歳までの子どもの様々な求めを正しく理解するための手引書。

目次

宇宙の計画に直面した六歳児 想像力の正しい用い方 無意識についての新しい心理学 子どもの想像力に贈られた世界 大洋の劇的なドラマ 母なる大地の創造 原始世界の戦い 白亜紀 再び陣痛にみまわれた大地 初期の人類〔ほか〕

内容

子どもたちの想像力は、確かに不思議に満ちた世界についてのおとぎ話によって育てられており、子どもが現に生活し、自分たちを取り巻く世界によっては育てられてはいません。これらの話は、子どもの心を、哀れみや憎しみに向けて動かす深い感銘を与えるような要素を含んでいます。なぜなら、そのような話は苦悩や悲劇に満ちており、飢えたり、虐待されたり、捨てられたり、裏切られた子どもたちで満ちているからです。ちょうど大人たちが、悲劇のドラマや小説に楽しみを見出すように、これら悪鬼や怪物についての話は、子どもを喜ばせ想像力を掻き立てますが、それらは現実とは何ら結びつきがありません。ところが逆に、私たちは、子どもに宇宙の物語を示すことによって、 想像力を再構築するための千倍以上も無限で神秘的なものを彼に与えます。 空想的な話だけに想像を求めることに慣れてしまうと精神が怠惰になるとします。 こうなると知性は埋没し、興味の範囲は、やがて自己の周りに集まり、この世の不思議や苦しんでいる人間への哀れみの心を締め出してしまうことになる。これは、正真正銘の生命における死なのだ、ということです。自主性と独立心、知的好奇心を育み、社会に貢献する人間になる、という方向は欧米社会に受け入れられて広まり、日本でも評価されています。
マリア・モンテッソーリ
マリア・モンテッソーリ
イタリア

著者の概要

ジャンル

[ "社会学", "西洋社会学", "西洋現代社会学", "教育学", "幼児教育" ]

著者紹介

医学博士、幼児教育者、科学者、フェミニスト。モンテッソーリ教育法の開発者として知られる。 19世紀、ローマ大学医学部に女性として初めて入学。当時は女性差別の残る時代だったため、入学後、男子学生と同室での系統解剖が許されず、別室で一人死体に向かいメスを取らざるを得ないなどの差別的処遇を受けたが、それらの逆境を乗り越え、1896年、イタリア初の女性の医学博士号を取得する。 卒業後も女性が医師になることに否定的な医学界で、なかなか職が見つからず、医学とかけ離れた状況にあったローマ大学付属の精神病院にようやく職を得た。当時の精神病院の患者たちは鉄格子に囲まれた暗い部屋に監禁され、治療らしい治療が行われない劣悪な環境下にあった。医師として絶望的と言えるこの職場で、マリアは知的障害があるとされる幼児が床に落ちたパン屑でしきりに遊ぶ姿に目を留めた。それ以降、幼児の様子を注意深く観察するうちに、何ら知的な進歩はないと見放されていた彼らが感覚的な刺激を求めることを認め、指先を動かすような玩具を次々と与え、彼らの治療を試みた。その中で彼女は、感覚を刺激することによって、知的障害児であっても知能の向上が見られるという確信を得て、他の障害児たちにも同様の教育を施した。マリアが彼らに知能テストを受けさせると、彼らの知能が当時の健常児たちの知能を上回るという結果が得られ、イタリア教育界、医学界に衝撃を与えることとなった。 1907年、障害児の治療教育で一通りの成果を挙げた感覚教育法を、マリアはローマの貧困家庭の子供たちに応用する機会を得る。ここにおいても知能向上で著しい結果を得、この方法をさらに追究するため、医師を辞め、ローマ大学に再入学した。 再入学したローマ大学では主に哲学を学び、その後、南フランス・アヴェロンで発見された野生児の教育に着手し、彼の観察と教育を行った感覚教育の先駆者であったジャン・イタールの著書の研究を進め、知的・発達障害者教育の先駆者エドワード・セガン(en:Édouard Séguin)医師に学んだ。さらに、生理学、精神医学の研究にも没頭。のちにモンテッソーリ教育と呼ばれる独自の幼児教育法を確立する。 モンテッソーリ教育が確立されると、その方法は世界各国で支持されるようになり、世界各地に次々とモンテッソーリ教育を専門に行う「子供の家」 (Casa dei bambini) が設立された。モンテッソーリ教育が急速に普及していく中、マリアは教師の質の重要性を認識、教員養成コースと1929年には国際モンテッソーリ協会(通称 AMI:本部オランダアムステルダム)を開設、資格取得制度を整えた。 イタリア通貨がユーロに切り替わる以前に流通していたイタリア1000リラ紙幣には、マリア・モンテッソーリの肖像画(表)とその学習風景(裏)が描かれていた。 ※モンテッソーリ教育の生徒にはアンネ・フランクやジャクリーン・ケネディ・オナシスを始め、世界中に数多くの有名人がいるが、ワシントン・ポスト誌の経営者および、ジャーナリストだったキャサリン・グラハム氏、 Amazon.comの創立者ジェフ・ベゾス氏、Googleの共同創立者セルゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏、wikipedia創設者ジミー・ウェールズ氏、最年少二冠棋士藤井聡太氏などもモンテッソーリ・スクール出身者である。