『 厚生経済学 』
1920
新古典派
名著の概要
ジャンル
[
"経済学",
"西洋経済学",
"西洋近代経済学",
"新古典派"
]
テーマ
経済について
厚生経済学
概要
人々の幸福(welfare=厚生)を高めるのに必要な政策は何かというのがピグーが追求したテーマであった。パレートが創始した厚生経済学を受け継ぎ、厚生経済学という分野を確立した名著。なお、現代の新厚生経済学に対して旧厚生経済学とも呼ばれる。
目次
内容
ピグーの3命題
「第1部において、多くの限定の下においてではあるが、 (1)国民分配分の平均量が大きいほど、 (2)貧者に帰属する国民分配分の平均取得分が大きいほど、 (3)国民分配分の年々の量と貧者に帰属する取得分の変動が小さいほど、 社会の経済的厚生はおそらくますます大きくなるであろうことを論じる。」
ピグーの第2命題
ピグーによれば、所得再分配はそれが経済全体のアウトプットを減少させないかぎり、一般に経済的厚生を増大させる(ピグーの第2命題)。この命題は、限界効用逓減の法則から導かれたもので、所得再分配は貧者のより強い欲望を満たすことができるから、欲望充足の総計(これは効用の基数性に基づく)を増大させることは明らかであるとしている(「厚生経済学」)。
ピグーの第3命題
「一定の生活水準に慣れている人の所得が突然に増加したならば、彼は新たに得た部分の所得を様々な刺激的な快楽に蕩尽しがちであって、その直接的および間接的効果を計算に入れるならば、満足の喪失の方が大きくなることさえあるからである。しかし、この議論に対しては十分な反論がある。....所得が突然にそして急激に増加すれば、通例、それに伴って多くの愚かな支出が行われ、その支出が経済的厚生をほとんどあるいは全く増加させないことはある。しかし、ある期間にわたって高額の所得が持続すれば、このような局面は過ぎ去るであろう。そして、所得が徐々に増加していく場合には、愚行の期間が全く生じないで済む。」
ピグー税・補助金
経済活動において市場を通さずに便益を享受したり損失を被ることを外部効果という。これを補正するため、正の外部効果に対しては補助金を交付し、負の外部効果に対しては課税する。このときの課税を、「ピグー税・補助金」あるいは単に「ピグー税」といい、環境経済学の分野などで現在も重視されている。
ピグー
イギリス
著者の概要
ジャンル
[
"経済学",
"西洋経済学",
"西洋近代経済学",
"新古典派"
]
著者紹介
イギリスの経済学者。
経済学者アルフレッド・マーシャルの後継者であり、「厚生経済学」と呼ばれる分野の確立者として知られる。
兄弟弟子であったジョン・メイナード・ケインズが反古典派経済学であるケインズ経済学を立ち上げ、それに真っ向から対立し古典派経済学を擁護した。古典派経済学が影響力を失っていくなかで最後まで古典派の立場に立ち擁護したことから「古典派最後の経済学者」と称される。
ピグーの著作物は膨大だが、特に「3部作」、すなわち『厚生経済学』(初版1920年)、『産業変動論』(初版1927年)、『財政の研究』(初版1928年)が重要とされる。
雇用に関するピグー効果を主張し、創成期のケインズ経済学と真っ向から対立した、そのためケインズ、ケインズサーカス、ケインジアンたちとの大論争を巻き起こした。後の経済学者にピグー・ケインズ論争と呼ばれる。この論争で用いたピグーのケインズ経済学批判は現代経済学においても重要なケインズ経済学批判として認識されている。
厚生経済学に先鞭を付けると共に発展に多大な功績を残す。
ピグー的課税の着想。