『 国際政治―権力と平和 』
1948
西洋現代政治学
名著の概要
ジャンル
[
"政治学",
"西洋政治学",
"西洋現代政治学"
]
テーマ
政治とは何か
国際政治について
権力について
平和について
概要
国際政治学の著作である。現実主義の古典とみなされている。本書は現実主義の原理を踏まえた上で政治権力の闘争と抑制について体系的に論じ、なおかつ平和の問題として今後の国際政治の方向性を示している古典的な研究である。
目次
内容
(第2刷から)第1章「リアリストの国際政治理論」で、モーゲンソーは、政治的リアリズムに関する自らの考えを6つの原則に整理している。
政治的リアリズムの6原則
「政治は一般社会と同様、人間性にその根源を持つ客観法則に支配されている」
「政治的リアリズムが国際政治という風景をとおっていく場合に道案内の助けとなる主な道標は、力(パワー)によって定義された利益(インタレスト)である」
「力として定義された利益という中心概念は、普遍的な妥当性をもつ客観的カテゴリーである」
「政治的リアリズムは政治行動の道義的意味を知っている」
「政治的リアリズムは、ある特定国の道義的な願望と、世界を支配する道徳律とを同一視しようとはしない」
「政治的リアリズムと他の思想学派との間の相違は、確かに存在する」
モーゲンソーは、「国際政治とは、他のあらゆる政治と同様に、権力闘争である」と指摘する。
そして3つの基本的なパターンに政治現象を区分する。
つまり力を維持する現状維持政策、力を増大する帝国主義政策、そして力を誇示する威信政策である。
また国力を、比較的安定している要素である地理、資源、工業力、軍事力、人口と、つねに変化している要素である国民性、国民の士気、外交の質、政府の質に分けて考察している。
国家権力を制限する方法として、第4部では、勢力均衡を、第5部では国際道義と世界世論を、第6部では国際法を取り上げて考察している。
また世界平和の実現に向けた問題については、軍縮や司法的解決といった「制限による平和」、世界国家の設立を理想とする「変革による平和」、そして外交を通じた「調整による平和」それぞれについてその展望を論じている。
結論として、モーゲンソーは、「国際生活の究極の思想――すなわち超国家的社会へ飛躍していくという理想――は、外交の伝統的手段である説得、交渉、および圧力といったテクニックを使うことによって実現される」と指摘し、外交の復権を主張している。
ハンス・モーゲンソウ
ドイツ
著者の概要
ジャンル
[
"政治学",
"西洋政治学",
"西洋現代政治学"
]
著者紹介
ドイツ出身の国際政治学者。シカゴ大学教授。
フランクフルト大学で国際法を教えていたが、ナチスによる迫害を恐れて1937年にアメリカ合衆国に移住。
国際政治を権力闘争とみなす現実主義学派の代表的論者。外交の行動準則として「力 (power) によって定義された利益」としての国益を提起した。この「国益」に照らして、アメリカによるベトナム戦争を批判した。
現実主義者として著名であるが、一方で軍事力のみに頼ることは危険であるとも結論付けている。