『 地中海 』
1949
西洋現代歴史学
名著の概要
ジャンル
[
"歴史学",
"西洋歴史学",
"西洋現代歴史学",
"西洋近現代歴史学"
]
テーマ
歴史とは何か
歴史の構造
概要
経済状態や地理的条件が世界史において果たす役割に注目、事件や出来事よりも「構造」に重きをおいたブローデルの歴史的思考を提示し、20世紀の歴史学に大変革を起こした。
目次
内容
事件や出来事よりも「構造」に重きをおいたブローデルの歴史的思考を提示した。画期的な点は歴史的時間における重層性の発見である。
歴史を「長波」・「中波」・「短波」の三層構造として把握することを提唱しており、表層にはまたたく間に過ぎ去る歴史個人および出来事史という「短波」があり、そしてゆっくりとリズムを刻む社会の歴史すなわちひとつの局面・人口動態・国家そして戦争などの「中波」があり、さらに最も深層において不変のあるいはほとんど動くことのない自然や環境・構造・長期持続などの「長波」があるとした。
特に最後の「長期持続」の相を重視する点で従来の歴史学とは一線を画した。
ブローデルは、すべては緩慢な歴史すなわち「長期持続」の歴史の周りを回っていると把握したのである。つまりそれは、人類史の内部において歴史を動かす本質的な要因として決定的な作用を及ぼしてきた構造的ないし現実的な諸原型の総体であり、緩慢に生成・変化・消滅する諸事実の構造(組み合わせ)であり、さらには、諸要素として持続的に有効にはたらいてきた深層における座標の全体であると主張した。
ブローデル
フランス
著者の概要
ジャンル
[
"歴史学",
"西洋歴史学",
"西洋現代歴史学",
"西洋近現代歴史学"
]
著者紹介
フランスの歴史学者。経済状態や地理的条件が世界史において果たす役割に注目し、20世紀の歴史学に大変革を起こした。
1949年、ブローデル47歳のとき『地中海』(博士論文『フェリペ2世時代の地中海と地中海時代』)が刊行され、公開に供された。「全体史」を目指したこの大作は、その後の歴史学に多大な影響をおよぼし、「新しい歴史学」のさきがけとなった。
1949年よりコレージュ・ド・フランス(CdF)の教授を務め、1956年にリュシアン・フェーヴルが死去したのちは雑誌『アナール』(1929年創刊。旧『社会経済史年報』)の編集長および高等研究院第6部門の責任者となって、フェーヴル後のアナール学派の中心的存在として数多くの人材を育て、また、歴史学と隣接諸科学の交流に大きな役割を果たすようになった。こうして、アナール学派からは、クロード・レヴィ=ストロース(人類学)やミシェル・フーコー(哲学・思想史)、ピエール・ブルデュー(哲学・社会学・民族学)などの新しい思潮や人間諸科学から刺激を受け、多くの若手歴史家が輩出した。
1958年には、『アナール』誌に論文「長期持続—歴史と社会科学」を発表し、「歴史家にとって、いっさいは時間に始まり、時間に終わる」と唱えて、レヴィ=ストロースの構造主義の「無時間性」に反駁を加えて「新しい歴史学」のリーダーとなった。なお、ブローデルの唱える歴史学における「構造」とレヴィ=ストロースら「構造主義」における「構造」の違いについては1966年の『地中海』第二版の結論部分でも説明がなされている。