夜間飛行
『 夜間飛行 』
サン= テグジュペリ
1943
現代フランス文学

名著の概要

ジャンル

[ "文学", "西洋文学", "フランス文学", "現代フランス文学", "児童小説" ]

テーマ

人間の尊厳 勇気

概要

サン=テグジュペリ自身の飛行機乗りの経験を活かしたリアリズムにあふれる作品。夜間飛行という当時は危険きわまりなかった事業の中で浮き彫りにされる、人間の尊厳と勇気が主題となっている。通信機・エンジン・飛行士の会話など、作者自身の経験を活かしたリアルな描写は、郵便飛行開拓期の歴史的史料としての価値も高い。フランスの植民地文学としても白眉である。

目次

内容

ある暴風雨の夜、ブエノス・アイレス空港に帰ろうとしている郵便輸送機がある。高度はすでに500メートルに落ち、やっと山地を逃れて海に出たが、燃料はあと少ししかない。ファビアンは死に直面しながらも、地上の幸せ、日常生活における個人的幸福を思索する。 一方、ファビアンの親友で、基地の主任リビエールは、ファビアン機の不時着の有無を各基地に問い合わせ、親友の生死の確認に苦慮しながらも、各基地の人間との連帯や航空事業の命運に心を砕かねばならない。それが社会のなかで行動する人間としての彼のモラルであり信念なのだ。だから彼は、結局遭難死したファビアンに対する個人的哀悼や悲しみを乗り越えて、ふたたび他の飛行機に発進命令を出さねばならない。 アンドレ・ジッドの序文でいう「人間の幸福は自由のなかにあるのではなく、義務の甘受のなかにあるという事実」を、人間の尊厳の明証たる勇気ある行動のうちに追求した思索小説。
サン=テグジュペリ
サン= テグジュペリ
フランス

著者の概要

ジャンル

[ "文学", "西洋文学", "フランス文学", "現代フランス文学", "児童文学" ]

著者紹介

フランスの作家、操縦士。郵便輸送のためのパイロットとして、欧州-南米間の飛行航路開拓などにも携わった。読者からは「サンテックス」の愛称で親しまれる。 南米空路開発に従事したあと帰仏して結婚し、『夜間飛行』(1931)を執筆、これによりフェミナ賞を受賞する。続いて『人間の土地』(1939)では、行動の倫理を追求し、行動主義文学の旗印を鮮明にする。 第二次世界大戦で動員され、とくに偵察任務に従事したが、独仏休戦後、一時、妻とニューヨークに亡命、戦争体験を踏まえた思索の書『戦う操縦士』(1942)、童話『星の王子さま』(1943)、書簡体エッセイ『ある人質への手紙』(1943)、文明を論じる未完の論文『城砦(じょうさい)』(没後刊、1948)などを発表。