大衆の反逆
『 大衆の反逆 』
オルテガ
1929
西洋現代政治学

名著の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋現代政治学" ]

テーマ

大衆について 政治について 現代民主主義の限界

概要

大衆人」の起源をたどり、「高貴な生と下等な生」を対比し、彼が大衆人の中に見出した野蛮性と原始性を非難している。とくに近代化に伴い新たにエリート層として台頭し始めた「科学者」を中心とする専門家層に対し、「近代の原始人、近代の野蛮人」と激しい批判を加えている。 それは、彼がエリートと非エリートの区別を、その社会関係ではなく内面的、精神的な態度に求めていたことに関係がある。 本書は現代の民主主義の限界を照らして余りある著作。

目次

内容

社会のいたるところに充満しつつある大衆。彼らは「他人と同じことを苦痛に思うどころか快感に感じる」画一性を指向する。急激な産業化や大量消費社会の波に洗われ、人々は自らのコミュニティなどの公的な場所を見失い、自分個人の利害や好み、欲望だけをめぐって思考・行動をしはじめるようになる。自分の行動になんら責任を負わず、自らの欲望や権利のみを主張することを特徴とする「大衆」がここに誕生した。 20世紀にはいり圧倒的な多数を占め始めた大衆が、現代では社会の中心へと躍り出て支配権をふるうようになったとオルテガは分析し、このままでは私たちの文明の衰退は避けられないと警告する。 こうした大衆化に抗して、自らに課せられた制約を積極的に引き受け、その中で存分に能力を発揮することを旨とするリベラリズムを主唱する。 そして、「多数派が少数派を認め、その声に注意深く耳を傾ける寛容性」や「人間の不完全性を熟知し、個人の理性を超えた伝統や良識を座標軸にすえる保守思想」を、大衆社会における民主主義の劣化を食い止める処方箋として提示する。
オルテガ
オルテガ
スペイン

著者の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋現代政治学" ]

著者紹介

スペインの哲学者。 オルテガの思想は、「生の理性 (razón vital)」をめぐって形成されている。「生の理性」とは、個々人の限られた「生」を媒介し統合して、より普遍的なものへと高めていくような理性のことである。 オルテガは、みずからの思想を体系的に構築しようとはせず、「明示的論証なき学問」と呼んだエッセイや、ジャーナリズムに発表した啓蒙的な論説や、一般市民を対象とした公開講義などによって、自己の思想を表現した。 オルテガの関心は、形而上学にとどまらず、文明論や国家論、文学や美術など多岐にわたり、著述をおこなった。 彼の定義によれば、大衆とは、「ただ欲求のみを持っており、自分には権利だけあると考え、義務を持っているなどとは考えもしない」、つまり、「みずからに義務を課す高貴さを欠いた人間である」という。 また、近代化に伴い新たにエリート層として台頭し始めた専門家層、とくに「科学者」に対し、「近代の原始人、近代の野蛮人」と激しい批判を加えている。 20世紀に台頭したボリシェヴィズム(マルクス・レーニン主義)とファシズムを「野蛮状態への後退」、「原始主義」として批判した。特にボリシェヴィズム、ロシア革命に対しては、「人間的な生のはじまりとは逆なのである」と述べている。 自由主義を理論的・科学的真理ではなく、「運命の真理」であるとして擁護している。