大陸と海洋の起源
『 大陸と海洋の起源 』
ヴェーゲナー
1929
地学

名著の概要

ジャンル

[ "科学", "西洋科学", "地学", "その他科学" ]

テーマ

地球物理学 大陸移動説

概要

大陸移動説について論じた古典的名著である。本書が主張した大陸の移動は、現在では人工衛星による精密な測地観測によって、大陸が実際に移動している状況が直接的に観測され実証されている。初版は1915年で、版を増すごとに研究成果を追加した。自然科学の真理を探究する過程を描写した点において、本書は古典としての大きな意義を持っている。

目次

内容

南北アメリカ大陸だけでなく、こんにち存在するすべての大陸は1つの巨大大陸「パンゲア」であったが、約2億年前に分裂して別々に漂流し、現在の位置および形状に至ったとする説を発表した。 各大陸の岩石の連続性や氷河の痕跡、石炭層や古生物の分布などから漂流前の北アメリカとユーラシア大陸が1つのローラシア大陸であったこと、南アメリカとアフリカがゴンドワナ大陸であったことを説いた。 第1章 歴史的序論(私の大陸移動説の起源と発展 大陸移動説の先駆者たち) 第2章 大陸移動説の本質,ならびに地質時代における地球表面の変化についての従来の諸見解に対する大陸移動説の関係(陸橋説 地球収縮説 アイソスタシー 海洋不変説 大陸移動説) 第3章 測地学的議論(地質時代の長さ 大陸の移動速度 ヨーロッパに対するグリーンランドと北米の移動 その他の移動 緯度変化) 第4章 地球物理学的議論(高さ頻度曲線の2つの極大 アイソスタシーと大陸移動 地震学的に見た大陸と深海底 シアル・シマ 地球の力学的性質) 第5章 地質学的議論(南大西洋両岸の比較 デュ・トワの議論 北大西洋両岸の比較 アフリカ・マダガスカル・インド アルガンの議論 オーストラリアとニュージーランド スンダ列島付近 南極大陸) 第6章 古生物学的および生物学的議論(陸地のつながり(南米―アフリカ、北米―ヨーロッパ、インド―マダガスカル―オーストラリア、ニュージーランド―南太平洋) オーストラリアの動物群 大陸移動説に基づく研究) 第7章 古気候学的議論(気候帯とその証拠 極移動の及ぼす効果 大陸移動説と二畳―石炭紀の気候帯(大陸氷河、偽氷河成礫岩、気候帯の復元) 第8章 大陸移動と極移動に関する基礎的問題(基準座標 極移動 地殻の相対運動 地球内部の軸の移動 軸の天文学的移動) 第9章 大陸を動かす力(極から遠ざける力 西へ動かす力 地表の高まりから生ずる力 シマ層の対流) 第10章 シアル層についての補足的覚え書(褶曲山脈 地溝帯と大陸分裂 弧状列島 大陸縁に平行なすべり運動 火山など) 第11章 深海底についての補足的覚え書
ヴェーゲナー
ヴェーゲナー
ドイツ

著者の概要

ジャンル

[ "科学", "西洋科学", "地学", "その他科学" ]

著者紹介

大陸移動説を提唱したドイツの気象学者。現在でいう地球物理学者である。 本来は気象学を専門とし、気球を使った高層気象観測技術などの先駆者であった。ヴェーゲナーが最初にグリーンランドに遠征したのは1906年であり、2年間かけてデンマークの探検隊と共に滞在した。北東岸の地図作りの手伝いをした。 1910年、世界地図(イギリスが中心に描かれているもの)を見て、南大西洋を挟んで、南アメリカ大陸の東海岸線とアフリカ大陸の西海岸線がよく似ていることに気づいた。これが大陸移動のアイデアの元となった。 1912年にフランクフルトで開かれたドイツ地質学会で初めて大陸移動説を発表した。 1915年にその主著『大陸と海洋の起源』の中で、地質学・古生物学・古気候学などの資料を元にして、中生代には大西洋は存在せず、現在は大西洋をはさむ四大陸が分離して移動を開始、大西洋ができたとする「大陸移動説」を主張した。彼の主張は全く認められなかった。 1929年には『大陸と海洋の起源』の第4版において、南北アメリカ大陸だけでなく、こんにち存在するすべての大陸は1つの巨大大陸「パンゲア」であったが、約2億年前に分裂して別々に漂流し、現在の位置および形状に至ったとする説を発表した。 各大陸の岩石の連続性や氷河の痕跡、石炭層や古生物の分布などから漂流前の北アメリカとユーラシア大陸が1つのローラシア大陸であったこと、南アメリカとアフリカがゴンドワナ大陸であったことを説いた。 しかし大陸移動の原動力をうまく説明できなかったヴェーゲナーの説は、またも完全に否定された。第4版ではマントル対流に言及したが、大陸移動の原動力と彼自身が気づかなかったのである。