失われた時を求めて
『 失われた時を求めて 』
マルセル・プルースト
1913
現代フランス文学

名著の概要

ジャンル

[ "文学", "現代文学", "現代フランス文学", "西洋現代文学", "西洋文学", "フランス文学" ]

テーマ

記憶 時間

概要

マルセル・プルーストによる長編小説。「世界最長の小説」としてギネス認定されており、その量は日本語訳では400字詰め原稿用紙10,000枚にも上る。ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』とともに、文学表現の新たな地平を切り開いた20世紀を代表する傑作と称される。

目次

内容

紅茶に浸った一片のプチット・マドレーヌの味覚から、自分の生涯の記憶を、幼少期から鮮やかに思い出し、社交界の人間模様、祖母の死、複雑な恋愛心理、芸術をめぐる思索など、難解で重層的なテーマが一人称で語られる。 「マドレーヌの味覚」というきっかけが呼び起こす記憶のことを、プルーストは「無意志的記憶」と呼んでいる。この対概念としての「意志的記憶」は、我々が一般に考える記憶であり、自らの意志により取り出す情報のことである。『失われた時を求めて』以前の小説では、意志的記憶に基づいて、登場人物の心情が語られたり、物語が進行することが通常であったが、本作は、「無意志的記憶」という、味やにおい、音により「向こうからやってくる記憶」に基づいた主観的な小説世界の地平を切り開いた画期的な作品である。 また、無意志的記憶として主人公が想起する思い出は、過去・現在・未来が交錯する「円環的時間」として描写されており、また導入部と結末も円環的な関係にあるなど、当時の文学界には衝撃的なコンセプトであったとされる。
マルセル・プルースト
マルセル・プルースト
フランス

著者の概要

ジャンル

[ "文学", "現代文学", "現代フランス文学" ]

著者紹介

フランス・パリで、裕福な医学者の子として生まれる。病弱な幼少期を過ごし、9歳の時に発症した喘息の持病を抱えながら文学に親しみ、リセから進んだパリ大学で法律と哲学を学んだ後はほとんど職には就かず、華やかな社交生活を送り、幾つかの習作を経た30代後半から51歳の死の直前まで、長篇『失われた時を求めて』を書き続けた。この遺作は、プルースト自身の分身である語り手の精神史に重ね合わせながら、19世紀末からベル・エポックの時代にかけてのフランス社会の世相や風俗を活写した長大作であると共に、その「無意志的記憶」を基調とする複雑かつ重層的な叙述と画期的な物語構造の手法は、後の文学の流れに決定的な影響を与え、ジェイムズ・ジョイス、フランツ・カフカと並び称される20世紀西欧文学を代表する世界的な作家として知られている。