存在と時間
『 存在と時間 』
ハイデッガー
1927
西洋現代哲学

名著の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋現代哲学" ]

テーマ

存在とは何か 時間とは何か

概要

解釈学と現象学の方法によって「何かが存在するとはどういうことか」というアリストテレス『形而上学』以来の問題に新たに挑んだ著作。『存在と時間』は実存主義や構造主義、ポスト構造主義など二十世紀の哲学思想にきわめて広範な影響を与えた。

目次

内容

ハイデガーは『存在と時間』において、存在の意味の解明を試み、人間の存在の本質はおのれ自身の自己了解のあり方によって規定されると論じ、新しい存在論を示しました。 本書の主題は「存在の意味は時間である」という命題を証明することにあります。「この論考の意図するところは、「存在」の意味への問いを具体的に掘り下げることである。そして私たちの当面の目標は、時間を解釈することで、時間があらゆる存在了解一般を可能にする地平であることを示すことにある。」 ハイデガーは人間存在を時間的な存在として解明するにあたり、日常世界における人間のあり方を「気遣い」と「道具」の言葉で説明します。気遣いとは関心や欲望のことを表し、その関心や欲望に応じて現れる存在が道具であるといいます。私たちの欲望や関心に相関される道具によって支えられている世界は、どのように生きるかを選択する時間的な場であるとしました。 人間存在は時間の流れの中にあり、過去に世界とどうかかわったかによって現在があり、現在どのように世界にかかわるかで未来のあり方が決まる。このように時間を抱え込んで存在している中で、未来の可能性に自らを駆り立てて生きる生き方を実存的生き方と論じました。そして未来の可能性に目を向けず、同じ日常にとどまる生き方を「頽落(たいらく)」と表現して批判しました。 また、ハイデガーは「死とは何か」を問うことで実存の本質を探り、現存在(人間のこと)は、死に至ってはじめて死と関わりを持つのではなく、生きているということ自体が、すでに死との関わりそのものであると論じました。人間は「死へと関わる存在」であり、その死という可能性との関わり方が現在の自分のあり方を規定しているといいます。 ハイデガーは「死」を「他ならぬ自分だけの、他から隔絶された、追い越しえない可能性」と規定します。そして現存在は死へと関わる存在から逃避しようとしており、実存の真理を覆い隠しているといい、さらに、死を「最極限の未了」と表現し、人間は常に未了であるとしました。 そして、死から自由になるために、自分の死を理解することを、死に先駆ける「先駆的了解(せんくてきりょうかい)」と表現し、そこに至ることで、死から逃亡せずに自分に今何ができるかに向かうことができるとしました。 つまり、人間は自分が死から逃れられないことを受け容れることよって、本来の存在に立ち戻ることができるのだとしたのです。これらの分析は「死の現存在分析」と呼ばれています。 ここから、実存とは時間であり、未来とは現在の時間の使い方であり、それによって意味づけがされるという実存主義が生まれた。
ハイデッガー
ハイデッガー
ドイツ

著者の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋現代哲学", "芸術学", "西洋芸術学", "美学" ]

著者紹介

ドイツの哲学者。 現象学のフッサールの他、ライプニッツ、カント、そしてヘーゲルなどのドイツ観念論やキェルケゴールやニーチェらの実存主義に強い影響を受け、アリストテレスやヘラクレイトスなどの古代ギリシア哲学の解釈などを通じて独自の存在論哲学を展開した。 1927年の主著『存在と時間』で存在論的解釈学により伝統的な形而上学の解体を試み、「存在の問い」を新しく打ち立てる事にその努力が向けられた。 20世紀大陸哲学の潮流における最も重要な哲学者の一人とされる。