幸福論(ヒルティ)
『 幸福論(ヒルティ) 』
ヒルティ
1891
西洋近代哲学

名著の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学" ]

テーマ

幸福とは

概要

三大幸福論の一つ。神のそば近くあることが永続的な幸福を約束するとする宗教的幸福論。 「人間が意識にめざめる最初の瞬間から、意識の消滅にいたるまで、最も熱心に求めるのは、やはりなんといっても幸福感である」。 「幸福」とは何かという問いはに対して、現実的かつ実践的に答えている世界的名著。

目次

内容

上手な仕事の仕方,時間の使い方などといった具体的かつ現実的な内容で構成。その趣旨は、「信仰や信念を持って生きることが幸福につながる」、というもの。ヒルティの幸福論の本質は、消費や所有ではなく、信念・信仰に沿って、生産を通じて善を成すことにある。 「我を忘れて自分の仕事に完全に没頭することのできる働き人は、最も幸福である」 「人の求める休息は,秩序ある活動によってのみ得られるものである」 「人生において到達できることは,ただ自分の運命との完全な和解だけである」 「悪事をせざるを得ないということそれ自体が罰である」 「幸福を得るには、あらゆる人間の性質の中で、勇気が最も必要である。これは確かに間違いのないことだ」 「人生の幸福は、神から与えられた自分の才能や能力を人や社会のために使い切る事である。」 「善をなすことが出来ないことが罰である」
ヒルティ
ヒルティ
スイス

著者の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学" ]

著者紹介

スイスの下院議員を務め、法学者、著名な文筆家としても知られる。日本では『幸福論』、『眠られぬ夜のために』の著者として有名。 敬虔なキリスト教徒として、神、人間、生、死、愛、などの主題を用いて、現代の預言者とも評されるほどの思想書を書き残した。また、そのようなテーマに深く踏み込んでいながらも、彼の著作には、非現実的な、空想的要素は含まれないという特徴がある。 ヒルティのキリスト教思想の特徴として、聖書の言葉を重んじていることが挙げられる。彼が最も愛読して感化を受けた書物は聖書であった。彼の著作の中では、聖書の語句を大変頻繁に引用しており、それを通して、キリスト教信仰者としてのあり方や、神への揺るぎない信頼と愛による忍耐を自身の経験を通じて述べている。聖書内でしばしば引用される書籍として、各福音書、詩篇、イザヤ書等の預言書などが挙げられる。聖書では、福音書内のキリストの御言葉を最重要視し、その他の書は添え物にすぎないとも言っている。ただし、これは聖書内のその他の書物を軽視するものではない。 聖書以外でもヒルティがしばしば引用する著作として、ストア哲学のエピクテトスやマルクス・アウレリウス、詩人のダンテなどがある。 確固とした信仰に根付いた生活を世の中でしていくために、さまざまな処世術や思考法、対処法などが著されており、中でも摂生的生活を旨としたヒルティが強調しているのは享楽を避けることである。ヒルティが避けるべきと繰り返し主張することとして、飲酒が挙げられる。彼は禁酒運動に力を入れ、『禁酒運動における大学生の使命』『禁酒運動における主な障害について』等の論文を著し、彼の助力で、1907年にはスイス国会で大多数をもってアブサン禁酒令を可決させている。