戦争論
『 戦争論 』
クラウゼヴィッツ
1830
西洋戦争論

名著の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋戦争論", "西洋戦争・戦略論" ]

テーマ

戦争について 戦略について 戦術について 戦闘について

概要

戦争と軍事戦略に関する書物である。本書は戦争の暴力性や形態を決める重要な要因として政治を位置づけたものであり、軍事戦略を主題とする最も重要な論文のひとつとして、今日でも各国の士官学校や研究機関で扱われている。

目次

内容

戦争論は戦争という現象の理論的な体系化に挑戦した著書であり、近代における戦争の本質を鋭く突いた古典的名著として評価されている。『戦争論』における画期は、それまで「戦争というものがある」「戦争にはいかにして勝利すべきか」という問題から始まっていた軍事学において「戦争とはなにか」という点から理論を展開したという部分にあると言える。また、攻撃や防御といった概念について、体系的かつ弁証法的に記述してあるという点にも注目できる。クラウゼヴィッツの弁証法的思考形態は、ヘーゲルの著作を通して得たものではなく、19世紀初頭における同時代的な思想形態の変遷の中ではぐくまれていったものである。 戦争についての記述はこの著作の最も注目すべき箇所であり、定義・本質・性質・現象など戦争に関する幅広い事項が議論されている。「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」という記述はこの著作の戦争観を端的に表したものの一つである。クラウゼヴィッツにとって戦争とは政治的行為の連続体であり、この政治との関係によって戦争はその大きさや激しさが左右される。 この研究は国民国家が成立する近代において、戦争の形態がそれまでの戦争とは異なる総力戦の形態への移行期に進められたものである。そのため本書の叙述では、同時代的な軍事問題についての叙述を多く含むものでもある。近年の研究において重要視されるのは戦争の本質や政治との関係を論じた第一編「戦争の本性について」とより明確に戦争と政治との関係を取り上げた第八編「戦争計画」であり、戦争の本質についての分析は現在でも高く評価されている。
クラウゼヴィッツ
クラウゼヴィッツ
ドイツ

著者の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋戦争論", "西洋戦争・戦略論" ]

著者紹介

プロイセン王国の軍人で軍事学者である。最終階級は少将。 ナポレオン戦争にプロイセン軍の将校として参加しており、シャルンホルスト将軍およびグナイゼナウ将軍に師事。戦後は研究と著述に専念したが、彼の死後1832年に発表された『戦争論』で、戦略、戦闘、戦術の研究領域において重要な業績を示した。特記すべき業績としては絶対的戦争、政治的交渉の延長としての戦争概念、摩擦、戦場の霧、重心、軍事的天才、防御の優位性、攻勢極限点、勝敗分岐点などがある。 クラウゼヴィッツの思想に影響を与えた人物にはフリードリヒ2世、ナポレオン・ボナパルト、ゲルハルト・フォン・シャルンホルストなどがおり、逆に影響を受けた人物にはヘルムート・カール・ベルンハルト・フォン・モルトケやコルマール・フォン・デア・ゴルツ、アルフレート・フォン・シュリーフェン、クレメンス・ヴィルヘルム・ヤーコプ・メッケルなどのドイツ軍の研究者や、エンゲルスなどの革命戦略家、そして海軍戦略家のジュリアン・コーベットや電撃戦の理論家ジョン・フレデリック・チャールズ・フラーなど、研究者に幅広い影響を与えている。