『 抽象と感情移入 』
1908
芸術論
名著の概要
ジャンル
[
"芸術学",
"西洋芸術学",
"芸術論"
]
テーマ
芸術について
概要
それ以前の美術史・芸術史の研究が表面的なものにとどまっていたため、その本質に迫るべく 抽象作用と感情移入作用の2つで展開した美術評論の著書。
目次
内容
それ以前の美術史・芸術史が、人物や作品の紹介・収集・歴史的な考証、一方では技術的・技能的な面に偏っていた。つまり、美術・芸術の本質を知ろうとする面がかけていた。
これに対して、テオドール・リップスの心理学的美学において提唱されていた「感情移入」型の古典主義的歴史観を踏まえ、「抽象」衝動を対置させ、抽象作用と感情移入作用の2つで展開した。
同書は、歴史がこの二つの精神的態度を交換・変遷する過程を、古代エジプトから中世ゴシック、ギリシャ・ローマなどの広範な美術作品に見出し、従来のヨーロッパ中心主義的歴史観の相対化を目指したものである。
「感情移入」衝動には主体と客体とのあいだに有機的な生命観が見出され、古典主義などが相当するとされる。逆に「抽象」衝動とは、世界との無限の混沌状態に直面した人間が平静を得るために求める「抽象」的な法則性や幾何学性のことを指す。
ヴォリンガーは「抽象」衝動を「古代人」の様式に帰属させ、エジプトのピラミッドなどがそれに対応するとした。また、彼はミュンヘン分離派や青騎士などの表現主義の動向にも関心を持ち、同時代美術の「抽象」性の根源を解明しようとした。
そして、ヨーロッパの美学がその例をギリシア・ローマ古典芸術やルネサンス以降の芸術に求めていたために、古代エジプトや、中世のビザンチン美術・ゴシック芸術や東洋美術を正当に評価できなかったことを明らかにした。
ウィルヘルム・ヴォリンガー
ドイツ
著者の概要
ジャンル
[
"芸術学",
"西洋芸術学",
"芸術論"
]
著者紹介
20世紀ドイツの美術史家。
ヴォリンガーはリーグルが芸術の先行条件と認めた内的衝動、「芸術意欲」を抽象作用と感情移入作用の双方向の発展と捉え、芸術史全体をこの2つの発展方向のどちらかが強まり、または双方から影響し合う過程として説明しようとした。
ヴォリンガーはそこから進んで、ヨーロッパの美学がその範例をギリシア・ローマ古典芸術やルネサンス以降の芸術に求めていたために、古代エジプトや、中世のビザンチン美術・ゴシック芸術や東洋美術を正当に評価できなかったことを明らかにした。