文明の衝突
『 文明の衝突 』
サミュエル・P・ハンティントン
1996
西洋現代政治学

名著の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋現代政治学" ]

テーマ

国際関係について 国際政治について 国際秩序について 文明について 文明の衝突について

概要

冷戦が終わった現代世界においては、文明化と文明化との衝突が対立の主要な軸であると述べた。特に文明と文明が接する断層線(フォルト・ライン)での紛争が激化しやすいと指摘した。記事の多くはイスラム圏、ロシアについてであり、他の地域に関してはおまけ程度の扱いである。

目次

内容

本書はそれまでの「西側」、「東側」、「国民国家」などの国際政治の視座ではなく、文明に着目して冷戦後の世界秩序を分析する国際政治学的な研究である。 その内容は、文明の概念と特徴を定義した第一部「さまざまな文明からなる世界」、非西欧文明の発展を論じている第二部「文明間のバランスのシフト」、文明における文化的秩序の発生について論じた第三部「文明の秩序の出現」、文明間の紛争や戦争について論じた第四部「文明の衝突」、そして西欧文明の復興や新時代の世界秩序について論じた第五部「文明の未来」から成り立っている。 冷戦期において脅威とされていた共産主義勢力の次に出現した新たな世界秩序において、最も深刻な脅威は主要文明の相互作用によって引き起こされる文明の衝突であることが分かる。 世界の主要文明の中核国によって世界戦争が勃発する危険性は否定できない。なぜならフォルト・ライン戦争は最初の戦争当事者が一構成国であっても、その利害は必然的に文明全体に関わることになるためである。 大規模な文明の衝突という最悪の事態を回避するためには中核国は他の文明によるフォルト・ライン戦争に軍事介入することには注意を払わなければならない。ハンティントンはこの不干渉のルールと、文明の中核国が交渉を行い、自己が属する文明のフォルト・ライン戦争が拡大することを予防する共同調停のルールを平和の条件としている。 そしてより長期的な観点から現在の不平等な文明の政治的地位は平等なものへと平和的に是正し、西欧文明と非西欧文明の衝突を予防する努力が必要であるだろう。ただしこれらの原則や政策は現状から考えて実施することは大きな困難である。 しかし世界平和を求めるためにはそれまでとは異なる文明に依拠した政治秩序が必要であると結論する。
サミュエル・P・ハンティントン
サミュエル・P・ハンティントン
アメリカ

著者の概要

ジャンル

[ "政治学", "西洋政治学", "西洋現代政治学" ]

著者紹介

アメリカ合衆国の国際政治学者。 彼の研究領域は政軍関係論、比較政治学、国際政治学などに及び、軍事的プロフェッショナリズム、発展途上国における民主化、冷戦後の世界秩序での文明の衝突の研究業績を残している。 リアリズム(現実主義)を基調とした、保守的な思想で知られる国際政治学者である。彼はもともと近代化とそれに伴う社会変動や民主化の理論で政治理論家としての名声を築いた。 著書『文明の衝突』において、冷戦以後の世界を文明にアイデンティティを求める諸国家の対立として描いた。コソボ紛争やトルコのEU加盟などさまざまな国際的な事例を引きつつ、文明同士のブロック化が進む世界を分析した。 この主張は世界各国で反響を呼び、イランのモハンマド・ハータミーの文明の対話やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンがスペインのホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロとともに提案した文明の同盟構想に影響を与え、彼の名を世界的なものにした。 なお彼は、「ホワイトハウスの政治顧問」としても活躍した経験をもち、アメリカのアイデンティティの混迷を描いた『分裂するアメリカ』などの著書もある。