日本の伝統
『 日本の伝統 』
岡本太郎
1956
芸術論

名著の概要

ジャンル

[ "芸術学", "西洋芸術学", "芸術論" ]

テーマ

日本の文化 日本の伝統 日本の美

概要

「法隆寺は焼けてけっこう」「古典はその時代のモダンアート」「モーレツに素人たれ」――伝統とは創造であり、生きるための原動力であると主張する著者が、縄文土器・尾形光琳・庭園を題材に、日本の美の根源を探り出す。『今日の芸術』の伝統論を具体的に展開した名著。

目次

内容

岡本は冒頭、従来の伝統観に立つ権威的な「伝統主義者」を痛烈に批判し、「われわれはいま、過去の日本と同時に西洋の伝統をも、ともども引きうけ、そして克服してゆかなければならないのです」と、高らかに宣言した。 続く章で、縄文土器について初めて考古学的にではなくモダン・アートの視点から高く評価した。こうして日本美術史の原点に縄文の火焔土器の激しい表現があったことを根拠に、従来日本的なものとして考えられていた「はかなさ」や弱々しさといった通念をくつがえし、むしろ力強い日本観を打ち立てたといえる。 さらに尾形光琳の《紅白梅図屏風》などを挙げて、情念的なものやアカデミズムに支えられた美しさを批判していった。美術の外部でも、建築家の丹下健三など、当時岡本の主張に共鳴した芸術家は少なくない。岡本の『今日の芸術』(光文社、1954)とともに、わかりやすく挑発的な言葉でモダン・アートのあるべき道を説く書物として、今も版を重ねる一冊。 従来の学術的な伝統論とは一線を画した岡本太郎の伝統論は、日本の芸術のあり方に新しい視座を与えてくれる。繊細な弥生式土器を日本の伝統の原点とするのではなく、荒々しいほどの力に溢れた縄文土器にこそ伝統の元はあるという。その時代のモダンアートであり、しかも力強いもの、生命力にあふれたものだけが、現在に残る。 目次 一 伝統とは創造である 人力車夫と評論家たち/法隆寺は焼けてけっこう/モーレツに素人たれ/伝統とは銀行預金のようなものか/古典はその時代のモダンアートだった/裏側文化 二 縄文土器 ――民族の生命力 いやったらしい美しさ/狩猟期の生活様式が生む美学/超近代的な空間感覚/呪術の世界/神を殺す 三 光琳 ――非情の伝統 真空に咲きほこる芸術/新興町人の精神と貴族性の対決/芸術家の反時代的精神/おのれ自身を乗りこえるもの 四 中世の庭 ――矛盾の技術 1 なぜ庭園を取りあげるか 2 銀沙灘の謎 3 借景の庭 4 反自然の技術 5 過去の遺産か今日の創造か 五 伝統論の新しい展開 ――無限の過去と局限された現在
岡本太郎
岡本太郎
日本

著者の概要

ジャンル

[ "芸術学", "東洋芸術学", "芸術論" ]

著者紹介

日本の芸術家。 芸術への迷いが続いていたある日、たまたま立ち寄ったポール=ローザンベール画廊でパブロ・ピカソの作品《水差しと果物鉢》を見て強い衝撃を受ける。そして「ピカソを超える」ことを目標に絵画制作に打ち込むようになる。 岡本は、この時の感動を著書『青春ピカソ』(1953年)において「私は抽象画から絵の道を求めた。(中略)この様式こそ伝統や民族、国境の障壁を突破できる真に世界的な二十世紀の芸術様式だったのだ」と述べている。