日本沈没
『 日本沈没 』
小松左京
1973
日本現代戦後文学

名著の概要

ジャンル

[ "文学", "東洋文学", "日本文学", "日本現代文学", "日本現代戦後文学", "SF小説", "日本SF小説" ]

テーマ

アイデンティティとは 危機管理とは

概要

未曽有の災害に対して日本人たちがどう立ち向かうかを描いた「日本沈没」。この物語には、災害とそこからの復活を日本人のアイデンティティの基礎として見つめなおそうという小松の構想が埋め込まれている。不測の事態に直面した際の危機管理のあり方や、自らの故郷が滅び去ったとき日本人のアイデンティティはどうなるのかという普遍的な問題を考えた著書。

目次

内容

未曽有の災害に対して日本人たちがどう立ち向かうかを描いた「日本沈没」。深海潜水艇の操縦士・小野寺と地球物理学者・田所は日本海溝で謎の海底乱泥流を発見。調査の結果数年内に日本列島の大部分が海面下に沈むという恐るべき予測を導き出す。政府は秘密裏に祖国を失った日本人が選択すべき行動計画「D2計画」を策定。パニックに直面しながら日本人たちはついにその日を迎える。この物語には、災害とそこからの復活を日本人のアイデンティティの基礎として見つめなおそうという小松の構想が埋め込まれている。第二回は、「日本沈没」で描かれた日本人たちの姿を通して、不測の事態に直面した際の危機管理のあり方や、自らの故郷が滅び去ったとき日本人のアイデンティティはどうなるのかという普遍的な問題を考えていく。 <あらすじ> 197X年夏。小笠原諸島の北にある無名の小島が、一夜にして海底に沈んだ。地球物理学者・田所雄介博士は、ただちに現地調査に赴く。深海調査艇「わだつみ」号の操艇者・小野寺俊夫、海洋地質学者の幸長助教授と共に日本海溝に潜った田所は、海底を走る奇妙な亀裂と乱泥流を発見する。 おりしも伊豆半島付近で地震が発生し、それに誘発されて天城山が噴火したため、内閣では地震学者との懇談会を開いて意見を聞くことになった。その席に招かれた田所は、「日本がなくなってしまう」可能性を口にするが、学者仲間の失笑を買うだけだった。だが、政財界の黒幕である渡老人は田所の説に興味を抱き、その説を検証するため首相を呼びつけ、極秘裏に「D計画」を立ち上げさせる。 D計画に集った田所、幸長、小野寺、情報科学者の中田一成らは、やがて一つの結論に達する。それは、日本列島近傍のマントル流に急速な異変が起こっており、その結果として「日本列島は最悪の場合2年以内に、地殻変動で陸地のほとんどが海面下に沈没する」というものだった。一方、渡老人は、比較文明史学者の福原教授らに依頼して、日本人の国外脱出とその後に関する計画を策定させる。 その間にも京都、ついで東京が相次いで巨大地震に襲われ、富士火山帯の火山が相次いで噴火するなど、異変は着実に進行していた。田所は危機が迫っていることを国民に知らせ、そのことに対する国民の反応を見るために、わざと週刊誌とテレビで情報を暴露し、D計画を去る。 その後のコンピューターによるシミュレーションで、日本沈没は10か月以内に迫っていることが判明し、ついに首相は、日本沈没の危機が迫っていることを国会演説で発表する。休火山までが活動を始める中、精鋭スタッフたちは死に物狂いで全国民の国外脱出計画「D-2」を遂行し、日本人を続々と海外避難させる。一方、敢えて国内に留まり日本列島と運命を共にする道を選択する者もいた。 四国を皮切りに次々と列島は海中に没し・・・。
小松左京
小松左京
日本

著者の概要

ジャンル

[ "文学", "東洋文学", "日本文学", "日本現代文学", "日本戦後文学", "SF小説", "日本SF小説" ]

著者紹介

星新一・筒井康隆と共に「SF御三家」と呼ばれ、日本SF界を代表するSF作家でありながら戦後の日本を代表する小説家でもあった。 広範な領域での業績と旺盛な活動力を岡田斗司夫、唐沢俊一らは「荒俣宏と立花隆と宮崎駿を足して3で割らない」と評している。 批評家の東浩紀は「小松は、戦後日本を代表する娯楽作家だっただけではない。また日本SFの創設者だっただけでもない。小松はそれよりもなりよりも、まずは知識人であり教養人であり、その溢れる知性に文学というかたちを与えるとき、SFという表現形式を見出したひとりの思索者だったのだ」と評価した。 代表作には、時間と空間をまたにかけた壮大な長編『果しなき流れの果に』(1966年)が挙げられる。この作品は1997年の『SFマガジン』500号記念号で発表された、「日本SFオールタイムベスト」において長編部門1位を獲得した。さらに短編部門では同じく小松作品の「ゴルディアスの結び目」が1位になった。