概念記法
『 概念記法 』
フレーゲ
1879
数理哲学

名著の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学", "科学", "数学" ]

テーマ

概念の量化

概要

フレーゲは、古代ギリシア(ギリシア哲学)のアリストテレス以来の最大の論理学者といわれる。革命的な『概念記法』(Begriffsschrift) は1879年に出版され、アリストテレス以来2,000年変わらずに続いていた伝統論理学を一掃して論理学の新時代を切り開いた。今日の数学で定着している∀(任意の)や∃(存在する)のような量化はこのフレーゲの業績に基づいている。

目次

内容

この本の完全な書名は「算術の式言語を模した、純粋な思考のための一つの式言語 eine der arithmetischen nachgebildete Formelsprache des reinen Denkens」である。『概念記法』は,アリストテレスが論理学という主題を創設して以来,論理学に関するおそらく最も重要な出版物であった。フレーゲが自分の式を開発して論理に到達しようとした動機は,ライプニッツが彼の推論計算機に対して持った動機と似ている。続いてフレーゲは,数学の基礎の研究に彼の論理計算を用い,それは次の四半世紀にわたって遂行された。 Terrell Ward Bynumは『概念記法』の意義を11項目挙げている。そのうちの主なものは, 命題関数 命題関数の発明(第1章§9 関数)。「水素は二酸化炭素より軽い」を表す式言語において,「水素」の代わりに「酸素」あるいは「窒素」を代入することができる。そこで,「水素」を項,「二酸化炭素より軽い」を関数と呼ぶ。項Aの関数をΦ(A)のように書く。フレーゲは,それまで名辞(主語-述語)で表されていた命題を,関数で表したのである。 量化理論 量化理論の発明(§11 一般性)。「すべての(all)」や「ある(some)」を扱う量化記号を導入した。これによって「誰もが誰かを愛している」のような多重量化された文を扱うことができるようになった。 関係の祖先 関係の祖先の最初の定式化(第3章§23- 系列の一般理論)。後述「祖先関係」。 数学的帰納法 数学的帰納法の証明の最初の論理的分析(第3章§23- 系列の一般理論)。後述「祖先関係」の「数学的帰納法」。 である。また,第二階の量化の考えも見られる。 第二階の量化 (§10)。フレーゲは,Φ(A)において記号Φは他の記号Ψ,Xで置き換え可能なものであるから,Φ(A)を項Φの関数と見なすことができる,と言う。ここで彼は関数の関数を考えている。
フレーゲ
フレーゲ
ドイツ

著者の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学", "科学", "数学" ]

著者紹介

ドイツの哲学者、論理学者、数学者であり、現代の数理論理学、分析哲学の祖にあたる。 フレーゲはバルト海に面したドイツの港町ヴィスマールの生まれである。母のアウグステ・ビアロブロツキーはポーランド系である。彼ははじめイェーナ大学で学び、その後ゲッティンゲン大学に移り1873年に博士号を取得した。その後イェーナに戻り、1896年から数学教授。1925年に死去した。 フレーゲは、古代ギリシア(ギリシア哲学)のアリストテレス以来の最大の論理学者といわれる。革命的な『概念記法』(Begriffsschrift) は1879年に出版され、アリストテレス以来2,000年変わらずに続いていた伝統論理学を一掃して論理学の新時代を切り開いた。今日の数学で定着している∀(任意の)や∃(存在する)のような量化はこのフレーゲの業績に基づいている。 フレーゲは命題論理と述語論理の公理化を最初に行った人物であり、特に述語論理はそれ自体がフレーゲの発明である(実際には概念記法は高階論理の体系であり、ラムダ計算の祖ともいえる極めて先駆的なものである)。しかしそのあまりもの先進性、独創性ゆえにフレーゲの同時代にはその意義は十分に理解されなかった。彼の概念が広まったのは、ジュゼッペ・ペアノやバートランド・ラッセルらによるところが大きい。ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインとエトムント・フッサールは、フレーゲの影響を大きく受けた哲学者である。また、ルドルフ・カルナップはフレーゲの授業に出席しており、彼の(カルナップによればシャイな)性格について書き残している。 またフレーゲは言語哲学や分析哲学の基礎を確立した人物の一人としても数えられる。「意義と意味について」における意味(独:Bedeutung, 英:meaning, reference)と意義(独:Sinn, 英:sense)の区別、概念と対象との区別などで知られる。