『 権力と支配 』
1910
西洋現代社会学
名著の概要
ジャンル
[
"社会学",
"西洋社会学",
"西洋現代社会学"
]
テーマ
権力について
支配について
組織について
社会について
概要
ヴェーバーが編集主幹となり、寄稿された論文集「経済と社会」の中の一つ。 ウェーバーの著作全体への入口とも言える本書は、支配のあり方を比較するために服従する側の動機から接近する。正当性のタイプに基づく支配の三類型(合法的・伝統的・カリスマ的)にはじまって、一つ一つの概念を緻密に検討する粘り強い論考は、やがて官僚制論へと展開しながら、あらゆる「支配」の本質に迫る。社会の科学はここからはじまった。
目次
■第一部 権力と支配
第一章 正当性の妥当
第二章 官僚制的行政幹部をそなえた合法的支配
第三章 伝統的支配
第四章 カリスマ的支配
第五章 カリスマの日常化
第六章 封建制
第七章 カリスマの没支配的意味転換
第八章 合議制と権力分立
第十章 没支配的団体行政と代議行政
第十一章 代表
第十二章 身分と階級
■第二部 官僚制
1 官僚制の特徴
2 官僚の地位
3 官僚制化の前提と根拠
4 官僚制機構の永続的性格
5 官僚制化の経済的および社会的帰結
6 官僚制の権力的地位
7 官僚制の発展段階
8 教養と教育の「合理化」
内容
ウェーバー社会学のエッセンスが圧縮された権力論。支配の三類型から生まれる様々な制度の相違と変化、合法的支配の拡大としての近代官僚制など、膨大な具体的実例、歴史を参考にしてはいるが、あえて現実を無視し単純に抽象化することによって描かれる「理念型」に迫って描かれている。
支配の三類型とは、支配(国家権力)の正統性の根拠には3つの分類(純粋な型)がある。
①合法的支配:
制定規則による合法的支配。形式的に正しい手続きで定められた制定規則によって、任意の法を創造し、変更しうるという観念による。最も純粋な型は、官僚制的支配。継続的な仕事は、主として官僚制的な力によって行われるが、最高権力者は、君主(世襲カリスマ的支配)であるか、国民によって選ばれた大統領(カリスマ的ヘル(主人))であるか、議会団体によって選挙されるかである。
②伝統的支配:
昔から存在する秩序と支配権力の神聖性、を信じる信念に基づく。最も純粋な型は家父長制的な支配。命令者の型は「主人」であり、服従者は「臣民」であり、行政幹部は「しもべ」である。
③カリスマ的支配:
支配者の人(パーソン)と、この人のもつ天与の資質(カリスマ)、とりわけ呪術的能力・啓示や英雄性・精神や弁舌の力、とに対する情緒的帰依によって成立する。永遠に新たなるもの・非日常的なるもの・未曾有なるものと、これらのものによって情緒的に魅了されることが、この場合、個人的帰依の源泉なのである。最も純粋な型は、預言者・軍事的英雄・偉大なデマゴーグの支配である。専ら純粋に指導者個人に対して、彼の個人的・非日常的資質の故に、服従が捧げられるのであって、彼の制定法上の地位や伝統的な権威に基づいて服従が行われるのではない。
そして、合法的支配の発展形として近代の官僚制が成立したとのべ、官僚制の分析を行う。つまるところ、官僚制が効果を発揮するためには、官僚が主義主張を持たずに合法的支配に基づく業務の執行のみを行うことが肝要だとする。
マックス・ウェーバー
ドイツ
著者の概要
ジャンル
[
"社会学",
"西洋社会学",
"哲学",
"西洋哲学",
"西洋現代社会学",
"西洋現代哲学"
]
著者紹介
ドイツの政治学者・社会学者・経済学者である。
社会学の黎明期のコントやスペンサーに続く、第二世代の社会学者としてエミール・デュルケーム、ゲオルグ・ジンメルなどと並び称される。
ヴェーバーは、西欧近代の文明を他の文明から区別する根本的な原理は「合理性」であるとし、その発展の系譜を「現世の呪術からの解放」と捉え、それを比較宗教社会学の手法で明らかにしようとした。
そうした研究のスタートが記念碑的な論文である「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1904年-1905年)である。この論文の中で、ヴェーバーは、西洋近代の資本主義を発展させた原動力は、主としてカルヴィニズムにおける宗教倫理から産み出された世俗内禁欲と生活合理化であるとした。