死に至る病
『 死に至る病 』
キルケゴール
1849
西洋近代哲学

名著の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学" ]

テーマ

絶望について

概要

実存主義の創始となった著書。一般・抽象的な概念としての人間ではなく、彼自身をはじめとする個別・具体的な事実存在としての人間を哲学の対象としていることが根底にある。 「死に至る病とは絶望のことである」といい、現実世界でどのような可能性や理想を追求しようと<死>によってもたらされる絶望を回避できないと考え、そして神による救済の可能性のみが信じられるとした。

目次

内容

本書でキェルケゴールは、死に至らない病が希望に繋がる事に対して死に至る病は絶望であると述べ、絶望とは自己の喪失であるとも述べている。しかし、この自己の喪失は自己のみならず神との関係を喪失した事となり、絶望は罪であるとしている。 そして人間は真のキリスト教徒ではない限り、自分自身が絶望について意識している、していないに関わらず実は人間は絶望しているのだと説いている。 その絶望は、本来の自己の姿を知らない無自覚の状態から始まり、更に絶望が深まると「真に自己」であろうとするか否かと言った自覚的な絶望に至る。絶望が絶望を呼び、むしろ絶望の深化が「真の自己」に至る道であるとしている。 第二部では絶望は罪と説いており、この病の対処法としてキリスト教の信仰を挙げ、神の前に自己を捨てることが信仰であり、病の回復に繋がるとしている。 また、人間が起こす躓きは大きく三段階に分けられるとしており、 ①信じもしないが判断も下されない段階、 ②キリストを無視し得ないが、信じることもできない段階、 ③キリストを否認する段階 キェルケゴールはこの三段階が決定的な死に至る病であると述べている。
キルケゴール
キルケゴール
デンマーク

著者の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学" ]

著者紹介

デンマークの哲学者、思想家。今日では一般に実存主義の創始者、またはその先駆けと評価されている。 彼が一般・抽象的な概念としての人間ではなく、彼自身をはじめとする個別・具体的な事実存在としての人間を哲学の対象としていることが根底にある。 「死に至る病とは絶望のことである」といい、現実世界でどのような可能性や理想を追求しようと<死>によってもたらされる絶望を回避できないと考え、そして神による救済の可能性のみが信じられるとした。 これは従来のキリスト教の、信じることによって救われるという信仰とは異質であり、また世界や歴史全体を記述しようとしたヘーゲル哲学に対し、人間の生にはそれぞれ世界や歴史には還元できない固有の本質があるという見方を示したことが画期的であった。