無意識の心理学
『 無意識の心理学 』
ユング
1960
西洋近代心理学

名著の概要

ジャンル

[ "心理学", "西洋心理学", "西洋近代心理学", "近代心理学" ]

テーマ

ユング心理学について

概要

人間を知るためにはなによりも無意識を――という確信のもとに、フロイト、アードラーの無意識理論を素描し、その上に自己の見解展開する。ユング心理学の一般概念が感銘に紹介されており、ユング思想に接近する人にとっては格好の入門書である。

目次

内容

コンプレックスの概念 応答の時間のずれが生じたり、スムーズな再生が見られない刺激語を詳細に調べて行くうちに、ユングは、刺激語が、被験者自身にとっても意識されていない、何かの感情的意味を持っていることを見出した。綿密な研究の後、ユングは、被験者の心には、意識されていない感情と観念の複合体が存在し、この複合体に抵触する刺激語が提示されたとき、応答の時間のずれが生じることを確認した。 ユングは、このような、無意識にある観念と感情の複合体を「コンプレックス(Complex)」と名づけた。 集合的無意識と神話 元型の発見 ユングは個人のコンプレックスが単一ではなく多数存在し、コンプレックス相互の関係を研究する過程で、更に深層に、自我のありようとは独立した性格を持つ、いわば「普遍的コンプレックス」とも呼べる作用体を見出した。 それは、男性であれば、自我を魅惑してやまない「理想の女性」の原像であり、また困難に出逢ったとき、智慧を開示してくれる「賢者」の原像でもあった。ユングは、このような「原像」が、個人の夢や空想のなかで、イメージとして出現することを見出したが、個人の無意識に存在するこのような原像が、また、民族の神話や、人類の諸神話にも共通して現れることを見出した。 集合的無意識と古態型 これらの像は、フロイトの学説にある「抑圧」等が起こる無意識層よりも更に深い位置にあり、民族や人類に共通する原像であった。ユングは、このような像は、個人の体験に基づいて構成されたのではなく、人類の極めて長い時間の経験の蓄積の結果、構成されたもので、遺伝的に心に継承されると考え、これらの像を生み出す性向を、「古態型(Arche-Typ,元型)」と名づけた。 神話的元型が存在すると考えられる無意識の層はきわめて深く、また民族等に共通するため、このような層を、ユングは「集合的無意識(Collective Unconscious)」と定義した。 意識の階層理論と元型 こうして、ユング心理学では、個人の「心・魂(Psyche)」は、自我がその中心としてある意識と、無意識にまず二分され、後者は更に、個人的無意識と集合的無意識に分けられた。 意識 : 自我 個人的無意識 : 個人によって抑圧(忘却)されて生じた無意識 コンプレックス 集合的無意識 :個人には通常意識されない先天的な無意識 諸元型
ユング
ユング
スイス

著者の概要

ジャンル

[ "心理学", "西洋心理学", "西洋近代心理学", "近代心理学" ]

著者紹介

スイスの精神科医・心理学者。 コンプレックス(感情複合)の現象を研究したユングは、言語連想実験等を通じて深層心理の解明を志向し、当時、精神分析を提唱していたウィーンのジークムント・フロイトから大きな影響を受けた。 しかし、ユングは「リビドー」の概念を、従来よりはるかに幅の広い意味で定義し直してフロイトと訣別し、「集合的無意識」の存在を提唱し、元型の概念において、神話学、民俗学、文化人類学等の研究に通底する深層心理理論を構成した。分析心理学(ユング心理学)を創始した。 ゲーテ、カントやニーチェの著作に感銘を受け、後の心理学者としての著作に、ゲーテの「ファウスト」やニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」への言及も多くみられる。