異邦人
『 異邦人 』
アルベール・カミュ
1957
現代フランス文学

名著の概要

ジャンル

[ "西洋文学", "西洋現代文学", "現代文学", "現代フランス文学", "フランス文学", "文学" ]

テーマ

不条理 ニヒリズム

概要

人間社会に存在する不条理について書かれている。カミュの代表作の一つとして数えられる。1957年、カミュが43歳でノーベル文学賞を受賞したのは、この作品によるところが大きいと言われる。 日本語訳としては、新潮文庫版の窪田啓作訳が広く知られ、冒頭1行目の「きょう、ママンが死んだ。」という訳も有名である。

目次

内容

アルジェリアの首都アルジェに住む主人公ムルソーのもとに、長らく養老院に居た母の死を知らせる電報が届く。葬儀に出席したムルソーであったが、母の死に対する悲しみを全く表さず、棺桶の前でタバコを吸い、コーヒーを飲み、葬儀の参列者を観察するばかりであった。そればかりか、葬儀の翌日には活での同僚マリイとデートし体の関係を持つなど、普段どおりの生活を続ける。そんな中、友人であるレイモンのトラブルに巻き込まれ、付きまとうアラブ人を射殺してしまう。逮捕、勾留されるムルソーであったが、自分のことに無関心なムルソーは獄中生活を苦ともせず淡々と過ごす。裁判では、こうした態度が反省していない証拠であることや、母親が死んでも普段どおりの生活をしていたなどの証言をもとに糾弾され、さらに犯行の動機を「太陽が眩しかったから "C'était à cause du soleil"」と述べたムルソーは、ギロチンによる公開処刑が決定してしまう。最期のときには、神への懺悔を促す司祭に激怒し、死刑の際に人々から罵声を浴びせられることを人生最後の希望にする。
アルベール・カミュ
アルベール・カミュ
フランス

著者の概要

ジャンル

[ "文学", "西洋文学", "西洋現代文学", "フランス文学", "現代フランス文学", "不条理文学" ]

著者紹介

フランスの小説家、劇作家、哲学者。フランス領アルジェリア出身。第二次世界大戦中に刊行された小説『異邦人』、エッセイ『シーシュポスの神話』などで「不条理」の哲学を打ち出して注目され、戦後はレジスタンスにおける戦闘的なジャーナリストとして活躍した。また『カリギュラ』『誤解』などを上演し、劇作家としても活動した。 戦後に発表した小説『ペスト』はベストセラーとなり、エッセイ『反抗的人間(フランス語版、英語版)』において左翼全体主義を批判し、反響を呼んだ。小説『転落』発表の翌年、1957年、史上2番目の若さでノーベル文学賞を受賞した。 カミュの著作は「不条理」という概念によって特徴付けられている。カミュの言う不条理とは、明晰な理性を保ったまま世界に対峙するときに現れる不合理性のことであり、そのような不条理な運命を目をそむけず見つめ続ける態度が「反抗」と呼ばれる。そして人間性を脅かすものに対する反抗の態度が人々の間で連帯を生むとされる。 カミュの文学的営為は、病気、死、災禍、殺人、テロ、戦争、全体主義など、人間を襲う不条理な暴力との闘いだった。それに対して、彼は一貫してキリスト教や左翼革命思想のような上位審級を拒否し、超越的価値に依存することなく、人間の地平にとどまって生の意味を探しもとめた。彼は「父」としての「神」も、その代理人としての「歴史」も拒否した。 日本で活動するタレントのセイン・カミュは従孫(兄の孫)にあたる。