精神現象学
『 精神現象学 』
ヘーゲル
1807
西洋近代哲学

名著の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学" ]

テーマ

精神とは何か 意識とは何か 認識について 現象について

概要

序文の中にある「死を避け、荒廃から身を清く保つ生命ではなく、死に耐え、死のなかでおのれを維持する生命こそが精神の生命である。」という言葉が、この著作におけるヘーゲルの立場を端的かつ率直に示した表明として有名である。

目次

A意識 Ⅰ感覚的確信 Ⅱ知覚 Ⅲ力と科学的確信 B自己意識 Ⅳ自己確信の真理  自己意識の自律性と非自律性  自己意識の自由 C理性 Ⅴ理性の確信と真理  観察する理性   自然の観察   純粋な状態にある自己意識の観察、および、外界と関係する自己意識の観察   自己意識と身体の関係―人相学と頭蓋論  理性的な自己意識の自己実現   快楽と必然性   心の掟とうぬぼれの狂気   徳性と世のならい  絶対的な現実性を獲得した個人   精神の動物王国とだまし   理性による掟の制定   理性による掟の吟味 (BB)精神 Ⅵ精神  真の精神―共同体精神   共同の精神―人間の掟と神の掟、男と女   共同体にかかわる行動―人間の知と神の知、責任と運命   法の支配  疎外された精神―教養   疎外された精神の世界   教養と、現実の教養の世界   信仰と純粋な洞察  啓蒙思想   啓蒙思想と迷信とのたたかい   啓蒙思想の真実  絶対の自由と死の恐怖  自己を確信する精神―道徳   道徳的世界観   すりかえ  良心―美しい魂、悪、悪の許し (CC)宗教 宗教  自然宗教   光の宗教   植物と動物   職人  芸術宗教   抽象的な芸術作品   生きた芸術作品   精神的な芸術作品  啓示宗教 (DD)絶対知 Ⅷ絶対知

内容

観念論の立場にたって意識から出発し、弁証法によって次々と発展を続けることによって現象の背後にある物自体を認識し、主観と客観が統合された絶対的精神になるまでの過程を段階的に記述したもの。カントの認識と物自体との不一致という思想を超克し、ドイツ観念論の先行者であるフィヒテ、シェリングも批判した上で、ヘーゲル独自の理論を打ち立てた初めての著書である。 ヘーゲルの哲学大系の中では、「精神現象学」とは「意識」を問題とする哲学の分野である。「精神現象学」の領域における「意識」の発展を、ヘーゲルの弁証法に基づいて示せば、意識そのもの・自己意識・理性の3段階を示す。 「意識そのもの」の段階では、「感性的意識」から「知覚」へ、そして「悟性」へと認識が深められる。 次にこのような認識の主体としての「自己」が自覚され、「自己意識」が生じる。 この「自己意識」と同質な意識を他者にも認めることによって、他人の「自己意識」をも認識し、単なる自我を超えた普遍的な、他者との共通性を持つ「自己」、「理性」の現れとしての「自己」を認識にするに至る。 この過程が「精神現象学」である。
ヘーゲル
ヘーゲル
ドイツ

著者の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学", "歴史学", "西洋歴史学", "政治学", "西洋政治学", "西洋近代政治学", "芸術学", "西洋芸術学", "美学", "西洋近現代歴史学" ]

著者紹介

ドイツの哲学者でドイツ観念論を代表する思想家である。 ヘーゲルは、古典に通じた慧眼で現実的かつ理想的な哲学を展開し、同時代のみならず後世にも大きな影響を与えた。 ヘーゲルは、元来、問答・対話の術を意味する弁証法について、思考及び存在の発展論理として積極的な意味付けを行ない大成化した。 それは、世界の本質は矛盾を内在させつつも、それを克服しようとして自己運動する躍動的生命とされることで、これまでの静止的な世界観はヘーゲル弁証法によって力動的なものに変えられていくというもの。世界は弁証法的運動過程、すなわち、諸要素の矛盾や対立を抱えながら、これを発展・解消させていく自己発展であると捉えられ、「精神」が理念としてみずからの自己実現を図る、精神の自己啓示に向けての運動過程、理念の歴史的な実現のプロセスとされるようになったのである。