『 義務について 』
紀元前44年
古代ギリシア・ローマ哲学
名著の概要
ジャンル
[
"哲学",
"西洋哲学",
"古代ギリシア・ローマ哲学"
]
テーマ
義務について
概要
息子マルクスにあてた手紙の形式をとって,道徳教育として記載されたもの。基本的な四徳 (知恵,正義,勇気,節度) と義務について論じ,無数の実例をひいて説明した名著。
目次
内容
基本的な四徳 (知恵,正義,勇気,節度) とそれらから発する義務について論じ,それらを実際の人生にあてはめて,ギリシア・ローマの歴史から無数の実例をひいて説明。人間の社会的性格と,同胞への博愛と,公的活動の必要を強調する。西ヨーロッパの「紳士」の概念は本書に発するとされる。本書は《老年について》などと並んで中世を通じて広く読まれた。なお,キケロの政治家,弁論家としての著作が再発見されたのは,ルネサンスになってからのことである。
『義務について』は、息子マルクスに道徳的に高貴な生き方を説いたものである。
「 まことに人間における自然と理性の力は小さなものではない。これによってただこの生きもののみが、秩序と正適、また言行における程度とは何であるかを、感じることができるのであるから。人間以外の生きもので、可視的な世界における美や優や、部分の調和を感じるものはない。人間における自然と理性は、これらの現象を類推的に目の世界から心の世界に移して、われわれの思慮や行為における美しさ、確乎さ、および秩序を一層つよく保持すべきものとし、更に同時に、何か不都合なことを犯し女々しい態度に陥らないよう、またあらゆる思考や行為において放恣にはしらないように、気を配っているのである。
こうしたものが人間にそなわっているがゆえに、われわれがここに探求する道徳的な高貴さが充実され完成されるのであって、この高貴さは、たとい世にもてはやされるものではないにしても名誉にあたいするものであり、たとい賞讃するひとがなくても、おのずから自然と賞讃に値いするものであることを、われわれは確信をもっていうことができる。」
西欧の法と倫理の考え方は、カントの「義務論」とミルの「功利主義論」に代表されるが、カントとミルの愛読書がこの『義務論』だったといわれている。ゆえに、『義務論』が、西欧の教養の中心を占める古典であることは間違いのないところであろう。
キケロは数々の名言を残している。
「恩を受けた人は、その恩を心にとめておかなければならない。しかし、恩を与えた人は、それを覚えているべきではない。」
「感謝の心は最大の美徳のみならずあらゆる他の美徳の両親なり。」
「誰でもまちがいをすることはある。しかし、まちがいを固執するのは馬鹿以外にはない。」
「生きるとは考えるということである」
キケロ
ローマ
著者の概要
ジャンル
[
"哲学",
"西洋哲学",
"古代ギリシア・ローマ哲学",
"政治学",
"西洋政治学",
"西洋古代政治学"
]
著者紹介
共和政ローマ末期の政治家、文筆家、哲学者。ラテン語でギリシア哲学を紹介し、アリストテレスの教えに従う古アカデメイア学派の弁論術・修辞学を評価し、その中で自身が最も真実に近いと考える論証や学説を述べた。その著作は、ルネサンス期にはペトラルカに称賛され、エラスムス、モンテスキュー、カントなどに多大な影響を与えた。