自省録
『 自省録 』
マルクス・アウレリウス・アントニヌス
2世紀
古代ギリシア・ローマ哲学

名著の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "古代ギリシア・ローマ哲学" ]

テーマ

幸福とは何か 死とは何か 困難とどう向き合うのか

概要

多忙な公務を忠実に果たしながらも心は常に自身の内面に向かっていました。その折々の思索や内省の言葉を日記のように書きとめたのが12巻からなる「自省録」。

目次

内容

ローマ帝国の繁栄にかげりが見え始めた時代。ローマ軍最高司令官として戦場から戦場へ走り回ったマルクス・アウレリウスは、闘いの間隙を縫うようにして、野営のテントの中で蝋燭に火を灯しながら、自身の内面に問いかけるようにして「自省録」を綴ったともいわれています。机上の空論でなく、厳しい現実との格闘、困難との対決のただ中から生まれた言葉だからこその説得力があるのです。また、「君が求めるものは何だ」等と二人称で問いかけるように書かれているのは、弱い自分を戒め叱咤激励するような思いが込められているとされます。 マルクス・アウレリウスは「人間はいかに生きるべきか」を生涯考え抜いた。富や名声といった自分の外部にあるものにのみに心を動かされると、人間は運命に翻弄され心の動揺を招くという。そうではなく「自分の内を見よ。内にこそ善の泉がある」と説く。自然を貫く理法(ロゴス)に照らして、絶えざる自己点検と内省を通じた自分の立て直しをはかっていくこと。外側にではなく内側にこそ価値があり、それを高めていくことこそが真の幸福であるという。 「私たちは協力するために生まれついたのであって邪魔し合うことは自然に反する」と説く彼は、どんな裏切りにあってもひとたび許しを乞われば寛容に受け容れた。これは多様な民族を抱えるローマ帝国を統治する知恵でもあったが、何よりも自分が学んだストア哲学の「すべての人間は普遍的理性(ロゴス)を分けもつ限りみな等しい同胞である」というコスモポリタニズム(世界市民主義)がベースにあった。 「肉体に関するすべては流れであり、霊魂に関するすべては夢であり煙である」と語るマルクス・アウレリウスは、人間の条件を「絶えざる変化」だと洞察する。そして自らに起こることを自分の権限内のものと権限外のものに峻別。自分の権限外にある困難な出来事や変化は与えられた運命として愛せと説く。その上で、自分の意志で動かせることにのみ誠実に取り組み自分の役割を果たすべきだという。 打ち続く戦乱の只中で、数多くの同胞や家族の死を目の当たりにし続けたマルクス・アウレリウス。自らも病に苦しむ中で「死とは何か」を思索し続けた。「死を軽蔑するな。これもまた自然の欲するものの一つである」と語る彼は、「死」も万物の変化の一つの現象であり、我々が死ぬ時には我々にはもう感覚がないのだから、死に対する恐れの感情も死を忌避する感情ももつ必要はないと説く。その自覚の上で「一日一日をあたかもその日が最期の日であるかのように」誠実に生き抜くことをすすめる。
マルクス・アウレリウス・アントニヌス
マルクス・アウレリウス・アントニヌス
古代ローマ

著者の概要

ジャンル

[ "哲学", "西洋哲学", "古代ギリシア・ローマ哲学" ]

著者紹介

第16代ローマ皇帝。ストア哲学などの学識に長け、良く国を治めた事からネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌスに並ぶ皇帝(五賢帝)と評された。軍事よりも学問を好んだ皇帝という姿は、彼の著作である『自省録』への評価を通じて今日も維持されている。これは国家を執筆したプラトンの時代から学識者にとって理想とされた「哲人君主」の実現例と見なされているからである。