『 興禅護国論 』
1198
鎌倉仏教経典
名著の概要
ジャンル
[
"宗教学",
"東洋宗教学",
"鎌倉仏教経典",
"仏教",
"仏教経典"
]
テーマ
禅宗
臨済宗
概要
日本に臨済宗を伝え広めた栄西による仏教書。栄西が禅の布教にあたったとき、南都北嶺より激しい攻撃が加えられたのに対し、禅宗の要目を論じた著作。栄西にとっては主著にあたり、「日本における禅宗独立宣言の書」とも評価される。
目次
内容
全3巻で、禅宗は決して天台宗の教えに違背するものではなく、根本的には対立・矛盾するものではないとして、仏典(経・律・論)において説かれる禅の本旨を述べた著作である。仏道を追究して悟りを得ることのできる人の心の広大さを称える一文「大いなるかな、心(こころ)哉(や)」で始まり、全編は以下の通り。
第一「令法久住門」…仏法の命の源は戒にあり、戒律を守って清浄であるならば仏法は久住する。
第二「鎮護国家門」…般若(=禅宗)は戒を基本としており、禅宗を奉ずれば諸天はその国家を守護する。
第三「世人決疑門」…禅に対する無知や疑惑、いわれなき誹謗(禅は悟りのない禅定をするだけである、「空」だけを強調する誤った教義であるなど)に対する反論。偏執の世人に対する批判。
第四「古徳誠証門」…古来の仏僧は禅を修行したことの証拠。
第五「宗派血脈門」…仏の心印は途絶えることなく栄西に至っていること。
第六「典拠増進門」…諸経論のなかにおいても教外別伝・不立文字の教えが説かれていること。
第七「大綱歓参門」…禅は仏教の総体であり、諸宗の根本であるとして以心伝心の真義を明らかにし、禅宗の大要を示す。
第八「建立支目門」…禅宗の施設・規式・条件などを示し、宗教界の刷新改革と戒律の重要性を説く。
第九「大国説話門」…インド・中国における禅門について示す。
第十「回向発願門」…功徳を他にふり向ける心を発せさせることの重要性を示す。
栄西は、この書において、戒律をすべての仏法の基礎に位置づけるとの立場に立ち、禅宗はすべての仏道に通じていると述べて、念仏など他の行を実践するとしても禅を修めなければ悟りを得ることはできないとした。
また、生涯を天台宗の僧として生きた栄西は、四宗兼学を説いた最澄の教えのうち、禅のみが衰退しているのは嘆かわしいことであるとし、禅宗を興して持戒の人を重く用い、そのことによって比叡山の教学を復興し、なおかつ国家を守護することができると説いた
栄西
日本
著者の概要
ジャンル
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"仏教経典"
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著者紹介
平安時代末期から鎌倉時代初期の僧。日本における臨済宗の開祖、建仁寺の開山。
また、廃れていた喫茶の習慣を日本に再び伝えたことでも知られる。