芸術の原理
『 芸術の原理 』
ロビン・ジョージ・コリングウッド
1938
美学

名著の概要

ジャンル

[ "芸術学", "西洋芸術学", "美学", "哲学", "西洋哲学", "西洋近代哲学" ]

テーマ

美とは何か 芸術とは何か

概要

本書『芸術の原理』はそれまでの芸術のあり方を批判的に検討しながら、美を明らかにすることを狙ったコリングウッドの美学的な研究である。

目次

内容

章立ては序論、芸術と技術、芸術と再現、魔術としての芸術、娯楽としての芸術、本来の芸術1、本来の芸術2、考えることと感じること、感覚と想像力、想像力と意識、言語、言語としての芸術、芸術と真理、芸術家と共同体、そしてむすび、以上の15章から成り立っている。 コリングウッドの立論の起点は本来のあり方を外れた擬似芸術に覆われ、また擬似芸術を支持するような芸術観が知られている当時の芸術状況にあった。コリングウッドはそもそも美学の理論とは美の概念それ自体ではなくむしろ芸術を対象とした理論の体系であると位置づけている。 なぜならば、美学者の関心は形而上学的な対象ではなく、自身をとりまく場所や時間にあるためである。だからこそコリングウッドは自身が置かれている芸術の状況の何が問題であるのかを明確化した上で、その解決策を本著で模索している。 コリングウッドが指摘する擬似芸術には二つの類型化が可能であり、それは人生のための芸術である魔術芸術と芸術のための芸術である娯楽芸術という類型である。魔術芸術とは芸術がもたらすさまざまな感情の刺激によって人々を実際の政治や商業などの実際的な狙いを持つ活動へと仕向ける種類の芸術と定義される。魔術芸術は例えば教会のための芸術や軍楽などを含む概念である。 また娯楽芸術とは逆に実際的な狙いがない活動へと仕向ける単に感情を高揚させるだけの芸術である。娯楽芸術の概念はその定義に基づけばさまざまな大衆芸術を含んでいる。 ヨーロッパの美術史ではこの魔術芸術と娯楽芸術が拮抗してきたとコリングウッドは概括し、真の芸術がその両方から脅威に晒されてきたと考えた。本来の芸術とは魔術や娯楽から分離された上で表現的で想像上のもの、ある種の言語であることを主張する。
ロビン・ジョージ・コリングウッド
ロビン・ジョージ・コリングウッド
イギリス

著者の概要

ジャンル

[ "芸術学", "西洋芸術学", "美学" ]

著者紹介

イギリスの哲学者、歴史家。 芸術の本質は感情表現である、と主張した。「発露」と「表現」の区別をつけ、前者は主体の意志と関係のない形式であるのに対して、後者は主体が意識的に表現の対象をコントロールしている形式であるとした。感情の発露は芸術ではなく、単なる露出趣味にすぎないとして斥けている。 芸術作品の鑑賞の方法についても理論展開をしている。例えば、絵画は単に視覚的な芸術なのではないと主張した。絵画を観るためには、作品制作の過程での画家の五感の働きを想像しなければいけない、と論じた。ポール・セザンヌでは筆使いから伝わってくる触感こそが最重要であると考えた。