虐殺器官
『 虐殺器官 』
伊藤計劃
2006
日本現代戦後文学

名著の概要

ジャンル

[ "文学", "東洋文学", "日本文学", "日本現代文学", "SF小説", "日本SF小説", "日本現代戦後文学" ]

テーマ

人間とは何か 意識とは何か 暴力とは何か 感情とは何か 幸福とは何か 世界とは何か 国家とは何か 秩序とは何か 平和とは何か 管理社会について

概要

伊藤計劃のデビュー作品である。2006年、第7回小松左京賞最終候補。2007年発表。「ベストSF2007」国内篇第1位。「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位。 デビュー作である本作は、癌が寛解状態だった2006年5月、10日間をかけて執筆した。 「3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」。宮部みゆきがその才能に嫉妬した、圧倒的著作。

目次

内容

サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した結果、アメリカをはじめとする先進諸国は厳格な個人情報管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた。十数年後、先進諸国からテロの脅威が除かれた一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が横行するようになっていた。事態を重く見たアメリカは新たに情報軍を創設し、各国の情報収集と戦争犯罪人の暗殺を行うようになった。 アメリカ情報軍に所属するクラヴィス・シェパード大尉は、後進国で虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポールの暗殺を命令され、相棒のウィリアムズら特殊検索群i分遣隊と共にジョン・ポールの目撃情報のあるチェコのプラハに潜入する。プラハに潜入したクラヴィスは、ジョン・ポールと交際関係にあったルツィア・シュクロウプの監視を行うが、次第に彼女に好意を抱くようになる。ある日、クラヴィスはルツィアにクラブに誘われ、そこで政府の情報管理から外れた生活を送るルーシャスたちと出会った。その帰路で、クラヴィスはジョン・ポールに協力するルーシャスら「計数されざる者」に襲撃され拘束されてしまう。拘束されたクラヴィスはジョン・ポールと対面し、彼から「人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる“虐殺文法”が存在する」と聞かされる。ルツィアを監視していたことを暴露されたクラヴィスはルーシャスに殺されそうになるが、ウィリアムズら特殊検索群i分遣隊の奇襲によって救出される。しかし、ジョン・ポールとルツィアは行方不明になってしまう。 プラハでの遭遇後、核戦争で荒廃したインドで虐殺を行っている武装勢力「ヒンドゥー・インディア共和国暫定陸軍」にジョン・ポールが関わっていることを知ったアメリカ情報軍は再びクラヴィスらに出撃を命令するが、「虐殺文法」の話をクラヴィスから聞かされたロックウェル大佐は、ジョン・ポールを生かしたままアメリカに連行するように命令した。「ヒンドゥー・インディア共和国暫定陸軍」の本拠地に潜入したクラヴィスらはジョン・ポールの拘束に成功しアメリカに連行しようとするが、ジョン・ポールに情報を漏らしていた上院院内総務の派遣した部隊に護送列車を襲撃され、リーランドら多くの隊員を喪った挙句、再びジョン・ポールに逃げられてしまう。 情報軍との取引により院内総務が政界を引退した後、アフリカの「ヴィクトリア湖沿岸産業者連盟」政府にジョン・ポールが招待されたという情報を得たアメリカ情報軍は、クラヴィスらにジョン・ポール暗殺指令を出し、クラヴィスはルツィアに会うため「ヴィクトリア湖沿岸産業者連盟」領内に潜入する。「ヴィクトリア湖沿岸産業者連盟」軍の攻撃を受けた特殊検索群i分遣隊は散り散りになり、クラヴィスは単身ジョン・ポールの住む邸宅に向かい、彼と再会する。そこでジョン・ポールは、クラヴィスに全ての事件の背景にあるある意図を明らかにする。ジョン・ポールの告白を受けて、クラヴィスがとった行動とは・・・。
伊藤計劃
伊藤計劃
日本

著者の概要

ジャンル

[ "文学", "東洋文学", "日本文学", "日本現代文学", "日本SF小説", "SF小説", "日本現代戦後文学" ]

著者紹介

日本のSF作家。武蔵野美術大学美術学部映像科卒業。 Webディレクターの傍ら執筆した『虐殺器官』が、2006年第7回小松左京賞最終候補となり、ハヤカワSFシリーズ Jコレクションより刊行され、作家デビュー。同作はゼロ年代日本SFのベストに挙げられている。同作品は、癌が寛解状態だった2006年5月、10日間をかけて執筆した。 期待の新人として脚光を浴びるも、2009年3月、肺癌のため死去。 2009年12月6日、遺作となった『ハーモニー』で第30回日本SF大賞を受賞した。「特別賞」枠を除き、故人が同賞を受賞するのは初めてであった。