『 西洋の没落 』
1918
西洋近代哲学
名著の概要
ジャンル
[
"哲学",
"西洋哲学",
"西洋近代哲学",
"社会学",
"西洋社会学",
"西洋現代社会学"
]
テーマ
世界について
文化について
文明について
没落について
概要
生の哲学の影響のもとに,文明は有機的な生成,没落の過程をたどることを明らかにし,近代ヨーロッパ文明の没落の運命を告知したものである。第1次世界大戦後の悲観主義的な精神状況のなかで知識人の危機意識をあおり,全ヨーロッパに異常な衝撃を与えた。
目次
内容
文明とは、文化の歴史的過程の終焉である。たとえ非常に知的な技術的形態、あるいは政治的形態が存在しているとしても、すでに生命はつき、未来に向けて新しい表現形態を生み出す可能性はまったくない。
文明の象徴は世界都市であり、それは自由な知性の容器である。それは母なる大地か ら完全に離反し、あらゆる伝統的文化形態から解放されたもっとも人工的な場所であり、実用と経済的目的だけのために数学的に設計された巨像である。
ここに流通する貨幣は、現実的なものにいっさい制約されることのない形式的・抽象的・知的な力であり、どのような形であれ文明を支配する。ここに群集する人間は、故郷をもたない頭脳的流浪民、すなわち文明人であり、高層の賃貸長屋のなかでみじめに眠る。彼らは日 常的労働の知的緊張をスポーツ、快楽、賭博という別の緊張によって解消する。
このように大地を離れ極度に強化された知的生活からは不妊の現象が生じる。人口の減少が数百年にわたって続き、世界都市は廃墟となる。
知性は空洞化した民主主義とともに破壊され、無制限の戦争をともなって文明は崩壊する。経済が思想(宗教、政治)を支配した末、西洋文明は21世紀で滅びるのである。
シュペングラー
ドイツ
著者の概要
ジャンル
[
"哲学",
"西洋哲学",
"西洋近代哲学",
"社会学",
"西洋社会学",
"西洋現代社会学"
]
著者紹介
ドイツの文化哲学者、歴史学者。
アメリカ合衆国、ロシア(ソ連)といった非ヨーロッパ勢力の台頭を受けて書かれた主著『西洋の没落』は、直線的な考え方である当時のヨーロッパ中心史観・文明観を痛烈に批判したもので、その影響は哲学・歴史学・文化学、芸術など多方面に及んだ。
ザクセン=アンハルト州ブランケンブルクの生まれ。父は鉱山技師で、中流家庭の出身であった。保守的な価値観の家庭で育ち自身の思想にも影響を与えた。幼少期にハレに移住し、ハレ大学・ミュンヘン大学・ベルリン大学の各大学に学び、哲学・歴史学・美術・音楽・数学などを学び、1904年に「ヘラクレイトス─彼の哲学のエネルギー論の根本思想に関する研究」で学位取得。
学位取得後、デュッセルドルフやハンブルクなどの高等学校で教鞭をとるも、1911年には教職を辞して以降は、著述と思索のなかで生活をする。
第一次世界大戦の戦時中に書かれた『西洋の没落』(Der Untergang des Abendlandes) 第一巻が1918年に発表されると、広く読まれた。「西洋の没落」は「全地球に広がっているヨーロッパ・アメリカ文化の没落の分析」であり、その目的は世界史の比較形態学とされた。
第一次世界大戦でドイツが敗戦すると、シュペングラーは伝統的なプロイセン保守主義にとらわれない新しいナショナリズムとしての「プロイセン的社会主義」を展開し、アルトゥール・メラー・ファン・デン・ブルックらとともに保守革命と呼ばれる思想の一角を形成する。
1936年にミュンヘンにて心臓病のため死去。55歳であった。