『 軍人と国家 』
1957
西洋現代政治学
名著の概要
ジャンル
[
"政治学",
"西洋政治学",
"西洋現代政治学"
]
テーマ
軍について
プロフェッショナリズムについて
概要
政軍関係に関する政治学の著作。本書で構築されたプロフェッショナリズム(職業主義)の概念を中心とする理論は政軍関係の議論においてスミスの『軍事力と民主主義』と並んで常に参照されている。
目次
内容
本書の構成は、第1部軍事制度と国家:理論的・歴史的考察、第2部アメリカにおける軍事力:歴史的経験(1789年-1940年)、第3部アメリカの政軍関係の危機(1940年-1955年)の三部から成り立っている。
第一部ではプロフェッショナリズムの概念から出発して軍隊のプロフェッショナリズムが何であるかを明らかにし、ヨーロッパ史における近代軍の成立、そして文民統制の諸形態や客体的文民統制の意義を理論枠組みに基づいて論じている。
第2部ではアメリカの歴史において主流であった自由主義的な政軍関係の形態、憲法上での文民統制のあり方、南北戦争以前のアメリカ軍の伝統、アメリカでのプロフェッショナリズムの形成が歴史的観察、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間での政軍関係の状況について、歴史観察を中心に論じられる。
そして第3部では第二次世界大戦以後に表面化してきた政軍関係の歴史的軋轢を参謀本部や国防省の権力構造や政治行動について指摘している。
ハンチントンは政軍関係を安全保障の枠組みに沿って位置づけている。まず安全保障においては軍事的安全保障、対内的安全保障、状況的安全保障の三つの局面と、それら三つの局面にそれぞれ運用と制度の水準がある。
そして政軍関係は軍事的安全保障政策の局面における制度的な水準に位置づけられており、軍備の分量や軍備の性質、また軍事力の使用についての諸々の政策課題が見出される。
この政軍関係は軍事的必要性と社会的条件の二つの要因から形成されており、ハンチントンは将校団の国家に対する関係として政軍関係を理論化している。
サミュエル・P・ハンティントン
アメリカ
著者の概要
ジャンル
[
"政治学",
"西洋政治学",
"西洋現代政治学"
]
著者紹介
アメリカ合衆国の国際政治学者。
彼の研究領域は政軍関係論、比較政治学、国際政治学などに及び、軍事的プロフェッショナリズム、発展途上国における民主化、冷戦後の世界秩序での文明の衝突の研究業績を残している。
リアリズム(現実主義)を基調とした、保守的な思想で知られる国際政治学者である。彼はもともと近代化とそれに伴う社会変動や民主化の理論で政治理論家としての名声を築いた。
著書『文明の衝突』において、冷戦以後の世界を文明にアイデンティティを求める諸国家の対立として描いた。コソボ紛争やトルコのEU加盟などさまざまな国際的な事例を引きつつ、文明同士のブロック化が進む世界を分析した。
この主張は世界各国で反響を呼び、イランのモハンマド・ハータミーの文明の対話やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンがスペインのホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロとともに提案した文明の同盟構想に影響を与え、彼の名を世界的なものにした。
なお彼は、「ホワイトハウスの政治顧問」としても活躍した経験をもち、アメリカのアイデンティティの混迷を描いた『分裂するアメリカ』などの著書もある。