『 都鄙問答 』
1739
心学
名著の概要
ジャンル
[
"哲学",
"東洋哲学",
"日本哲学",
"心学",
"日本近世哲学"
]
テーマ
世界について
人間について
人生について
学問について
経済について
商業について
概要
江戸時代中期に成立した心学運動の経典というべき書である。町人道を説いた。問答体による構成は四巻16段からなっている。 封建社会の儒教倫理に沿って職能として士農工商それぞれの社会的意義を考え、経済と道徳の一致を説き商人にも流通の役割の価値を見出し、利益を追求することの正当性を強調している。
目次
内容
封建社会の儒教倫理に沿って職能として士農工商それぞれの社会的意義を考え、経済と道徳の一致を説き商人にも流通の役割の価値を見出し、利益を追求することの正当性を強調している。
第一巻は序論として人の本性を知ることと、教養を高めようとする座学よりも、修行や実践を通じた経験に裏打ちされた物にこそ価値があると説いている。さらに、孝行の心や士農工商それぞれに階級的な職分に応じた倫理道徳があると述べている。
第二巻は、仏教や神道についても、互いに反目しあうものではなく神・仏・儒・老荘のいずれの教えにも修養の助けになるものがあり教えから取り入れるべきであると説く。さらに商人にも学問が必要で、教育を受け正しい利益を得るのは侍の俸禄と同じで当然と説く、商人の社会的意義を強調し職分上は平等であるという。
第三巻は「性理問答の段」で朱子学的な心の問題を追及している。
第四巻では「学者行状心得難キヲ問ウ」の段以下6段。信仰や医学、はたまた借金に至るまでの身近な問題についての問答でいずれも観念的でなく、町人の生活に密着した実例を挙げその他対処法も平易に説くところに魅力がある。
石田梅岩
日本
著者の概要
ジャンル
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"哲学",
"東洋哲学",
"日本哲学",
"心学",
"日本近世哲学"
]
著者紹介
江戸時代の思想家、倫理学者。石門心学の開祖。
45歳の時、受講に際し紹介が一切不要で、かつ性別も問わない無料の講座を自宅の一室で開き、後に「石門心学」と呼ばれる思想を説いた。すなわち「学問とは心を尽くし性を知る」として心が自然と一体になり秩序をかたちづくる性理の学としている。梅岩自身は自らを儒者と称し、その学問を「性学」と表現することもあったが、手島堵庵などの門弟たちによって「心学」の語が普及した。
その思想の根底にあったのは、宋学の流れを汲む天命論である。同様の思想で石田に先行する鈴木正三の職分説が士農工商のうち商人の職分を巧く説明出来なかったのに対し、石田は長年の商家勤めから商業の本質を熟知しており、「商業の本質は交換の仲介業であり、その重要性は他の職分に何ら劣るものではない」という立場を打ち立てて、商人の支持を集めた。
倹約の奨励や富の蓄積を天命の実現と見る考え方はアメリカの社会学者ロバート・ニーリー・ベラーによってカルヴァン主義商業倫理の日本版とされ、日本の産業革命成功の原動力ともされた。
「二重の利を取り、甘き毒を喰ひ、自死するやうなこと多かるべし」「実の商人は、先も立、我も立つことを思うなり」と、実にシンプルな言葉でCSRの本質的な精神を表現した石田梅岩の思想は、近江商人の「三方よし」の思想と並んで、「日本のCSRの原点」として脚光を浴びている。